天然木ならではの趣を与えるキャラクター
ノット・ピンノット
バークポケット
白太
多彩な木目
照りの表情
ルネサンス時代・最高級家具材
イギリスの著述家であるパーシー・マッコイドは、15〜19世紀初頭にかけての英国家具の歴史を主に使われていた木材によって分類しました。その木材とは、オーク、ウォルナット、マホガニー、サテンウッドの4種。「ウォルナットの時代」と呼ばれるのは、1660〜1720年の間です。 イタリアではさらに早く、15世紀後半頃からウォルナットが家具材の主流になっていったといいます。当時はイタリアを中心に起こった芸術革新・ルネサンスの最盛期。ウォルナットの流行はイタリアからフランスへ伝わり、やや遅れてイギリスにも影響を与えたというわけです。
アメリカ大統領の演説台
世界三大銘木のひとつに数えられるブラックウォルナット材。欧米ではその落ち着いた色合いと重厚な木目の美しさが好まれ、古くから高級家具や工芸品に用いられてきました。その代表格が、アメリカ合衆国大統領の演説台。どっしりとしたその佇まいは、国民に向かって語りかける大統領の、ひいては国そのものの威厳を示す演出に一役かっていたのでしょう。合衆国最高裁判所のベンチにも、同じくウォルナットが使われています。そんな材で床を作れば、室内の落ち着きと高級感がぐっと増すのは言うまでもありません。
子孫繁栄の象徴
ご承知の通り、ウォルナットとはクルミの木のこと。アメリカではクルミが子孫繁栄のシンボルであり、結婚式ではライスシャワーならぬウォルナットシャワーが行われることもあるそうです。一方、日本ではおせち料理の定番である「田作り」に欠かせない食材。硬い殻で中身を守っていることから、「家庭円満」や「契り」という意味があるそうです。洋の東西において、家庭に関する縁起物として親しまれるクルミ。床材にすれば、家の中にたくさんの幸せを招いてくれそうです。
ジョージ・ナカシマ
ウォルナットは素晴らしい樹種ですが、白太(樹皮に近く色が薄い部分)には虫がつきやすいことから、無垢で使うときには気をつけなければなりません。しかし、虫食い跡を残した板もまた、この木ならではの風合いがあるとして珍重されることがあります。
20世紀を代表する家具デザイナーのひとりであるジョージ・ナカシマは、ウォルナットをこよなく愛していました。「バール」と呼ばれる根や太く枝分かれした又木といった、あまり使われることのない部位も、大切に生かしたことでよく知られています。こうした特徴的な部分にこそ、アーティスティックな感性が刺激されたのでしょう。普通は捨ててしまうような部分さえ高級家具の一部として愛されるほど、ウォルナットには銘木としての味わい深さがあるのではないでしょうか。