天然木は、革製品等と同じく、時を経るごとに美しくなる「経年美」の魅力を持ちます。家具や住宅の内装など、長く使うことも多い木製品。今回は、木の種類による経年変化の違いやその仕組みなど、天然木の経年美についてご紹介します。
光によって深みのある「色合い」へ
天然木の経年変化と言えば、日焼けによる「色合い」の変化がもっとも大きな特徴でしょう。木製家具を例に取ってみると、経年によって飴色に変化したヴィンテージ家具などは新品にない風格を感じますよね。
天然木の色合いの変化は、木材の中のごく僅かな成分である、ポリフェノールやアミノ酸・ステロイドなどの「抽出成分」が変化することで起こります。木材はその大部分がセルロース・ヘミセルロース・リグニンの3種類で構成されていますが、その色合いについては抽出成分が大きな役割を担っているのです。(リグニンも一部関係していると言われています。)
そして色合いを変化させる最大の要因が「光」です。木材中の抽出成分が光を受け分解されることで、木材の色合いが変化します。色変化の仕方は樹種によってさまざまで、濃くなるものもあれば淡くなるものもあります。さらに、同じ樹種でも部位によって変化の仕方が異なるなど、様々な色合いに変化していきます。
光は大きく紫外線・可視光線・赤外線に分けられ、一般的に、濃色化するのは紫外線の影響が強く、淡色化は可視光線の影響が強いと言われています。ただ、木材の抽出成分は同じ樹種でも個体差が大きく、まだまだ明確な仕組みはわかっていないのが現状です。
樹種によって異なる色合いの変化
では、具体的にどのように色合いが変わるのでしょうか?実際のフローリングの写真でご紹介します。
まずは、経年によって色が濃くなっていく樹種、ブラックチェリーです。ブラックチェリーは色の変化が大きいことで知られていて、淡い桃色から飴色へ、深みを増していく色変化が人気の理由の1つです。
次は、逆に経年によって色が淡くなっていく樹種、ブラックウォルナットです。時間とともに柔らかく、落ち着いた印象へ変化していきます。
実際の施工例も見ていきましょう。
こちらの写真は、経年変化前と変化後を比較したものです。左は施工当時の写真、右は数年経過したブラックウォルナットのフローリングです。経年によって色合いが変化し、空間の印象も違って見えるのが分かると思います。
木は、家具や住宅の内装など、長く使う製品に使われることも多いです。暮らしの中で少しずつ色合いに落ち着きと深みが増し、独特の風合いを醸し出していくのは、天然木ならでは魅力です。
長年、強い日ざしや雨風を受けると?
さまざまな色変化をする木材ですが、長年にわたり強い直射日光を受ける屋外や窓際等では、どんな樹種でも最終的にはすべて白褐色やシルバーグレーに変化します。
光の中でも特に太陽光は、木材に強い影響を及ぼし色変化の進行を早めるため、直射日光があたる床面等は出来るだけカーテンで遮るよう心掛けることが重要です。それでも、窓際のカーテン裏等は、直射日光の影響を長期間にわたり強く受けるため、色変化の進行が早まり最終的に色が抜けていきます。
さらに屋外の場合、太陽光だけでなく雨風も影響します。光によって分解された抽出成分は水に溶けやすく、それらが雨によって木材の外に流れ出てしまうことで、グレーの色合いに変化していきます。
時間が経つにつれて様々な色合いに変化する天然木は、10年、20年と、「一緒に歳をとっていく愉しみを味わえる」素材です。樹種によって様々な変化をするので、木製品を選ぶ時は、色変化の仕方もポイントの一つとして取り入れてみてくださいね。