森林はもちろん、公園や庭、街路樹など、家から一歩外に出るとたくさんの樹木に出会うことができます。
私たち人間ははるか昔から、木とともに暮らしてきました。木と暮らすメリットは数多くあるといわれています。木は成長の過程で二酸化炭素を吸収し、酸素を放出することで地球温暖化の抑制に関わるほか、都市緑地は周囲の気温を下げてヒートアイランド現象を軽減させてくれることが分かっています。森林浴では木を見たり、触れたり、香りを楽しんだりと、五感を使ってリフレッシュすることができます。
十分に成長した樹木は、木材へと加工されフローリングや家具となり、さらに暮らしに寄り添ってくれます。実は、木の成長の証は木材になってもしっかりと残っています。木がどのように成長していくのか、そして成長の過程がどのように木材に表れるのか、順を追って見ていきましょう。
木を成長させる光合成のしくみ
木は生きてゆくために、日々光合成を行っています。まず、葉から空気中の二酸化炭素を取り込み、根から吸い上げた水と太陽から受けた光を使って、葉緑体と呼ばれる部分で光合成を行い、酸素とデンプンなどの養分をつくります。
このようにして光合成の反応の過程でつくられた酸素は葉から空気中に放出され、養分は葉や根、果実などに貯蔵され、木が生き、成長してゆくために使われます。地球上の酸素はこのように、木をはじめとした植物が行う光合成によってつくり出されています。
枝や葉の成長
樹木の枝や葉は、光合成に欠かせない「光」を効率よく受けられるように、特徴的なかたちに成長します。多くの木では、太陽光が差す側から木を観察すると、葉がなるべく重ならないように付いていることが分かります。葉が重ならないことで、どの葉も効率よく光を吸収することができているのです。
枝や葉の形は樹種によりさまざまで、枝分かれを多くして色々な方向に葉を伸ばす樹種、葉の形を変えて重なりを避ける樹種など、多種多様な工夫をして成長します。
木の利用
こうして枝を伸ばし、葉をつけ、成長した木の一部は、木材として利用されます。木材として主に使われるのは木の幹の部分で、枝や葉を除いて丸太となり、加工されます。丸太には向きがあり、木が生きていたときに根元だった側を「元」、樹冠(葉が茂っていた部分)だった側を「末」と呼んで区別します。丸太は樹皮を取り除き、フローリングへと加工されます。
木が成長してゆく際に、もともとあった枝が幹の中に取り込まれることがあります。この枝の痕を、「節」と呼びます。枝が生きている間に巻き込まれ、幹と組織的に繋がっているものを「生節」といい、枯死した枝が取り込まれ、幹と組織的に繋がっていないものを「死節」といいます。
他にも、樹皮が傷ついたときに(キツツキや虫につけられた傷など)、その部分を癒そうと巻き込むように成長した部分の痕跡である「バークポケット」や、樹脂が細胞の隙間に溜まり、点や筋状に色が変わった「ガムポケット」など、木材には木の生命活動の痕跡が数多くとどまり、さまざまな表情を生み出しています。
このように、木は加工されてフローリングになっても、かつての生きて成長した証を残しています。最近では節の多いところをあえてデザインとして採用することも増えてきています。ぜひご自宅のフローリングを眺めながら、木の一生に思いを巡らせてみてください。