フローリングは空間に占める面積が大きいため、張り替えると空間全体のイメージを大きく変えることが出来ます。しかし、一般的に大掛かりな工事となりますので、専門業者に依頼する前にどのくらいの予算が必要なのかをある程度知っておきたい、という方も多いのではないでしょうか。
そこで、フローリング(床)の張り替えにかかる費用相場を、いくつかのパターン別でご紹介します。ご自宅のリフォームを検討されている方、賃貸物件のオーナー様で張り替えの必要性があるという方は予算の目安として参考になさってください。また、最近は、家具や雑貨などの簡単DIYにとどまらず、比較的大掛かりなDIYをされる方も増えているので、フローリングをDIYする方法についても解説しています。
フローリングの張り替え費用相場
フローリングの張り替えにかかる費用は、「工法」「どのような床材に張り替えるか」「施工面積」の3つで決まります。工法と使用できる床材については、戸建て住宅なのか、マンションなのか、マンションの場合は、床下地構成が二重床下地なのかコンクリート下地なのか、お住まいの住宅の条件によって変わってきます。リフォームの場合、下地条件や施工方法は現場によってまちまちで、ケースバイケースとなるので、ここでは一般的なものをご紹介します。
工法について
フローリングのリフォームの方法は大きく2つになります。1つは、既存床を剥がして新しい床材に張り替える「張り替え」、もうひとつは、既存床をそのまま残して上から新しい床材を貼る「上貼り」です。「張り替え」、「上貼り」ともに、下地条件によって使用できる商品と工法が変わってきます。そして、それぞれの工法によって、費用と工期が大きく変わってきます。基本的には「上貼り」のほうが費用を抑えて工期を短縮することができますが、既存フローリングの状態によっては選べないケースもあります。
●張り替え
フローリングリフォームで最もオーソドックスなやり方が「張り替え」となります。
「張り替え」のメリットは、既存の床を剥がして新しいフローリングと入れ替えるので、同じ厚みの仕上げ材を使えば、天井高さや開口部の見切り、掃き出しなどの納まりも変えずに、新しくすることができます。
既存の床材を剥がしたとき、下地にきしみなどの不具合がある場合は、下地を補修する必要があります。下地に傷みもなくきれいな状態であれば、特に補修することなく、新しいフローリングを施工することが可能です。
戸建て住宅や二重床下地のマンションには、厚み12㎜~15㎜の一般的なフローリング、コンクリート下地のマンションの場合は、裏面にクッション材が付いた防音直貼りフローリングを使用します。(例外もあります。)一般的なフローリングは接着剤と釘を使って施工しますが、防音直貼りフローリングは接着剤のみで施工します。また、各フローリングメーカーの豊富なラインナップから選ぶことができるのもメリットのひとつです。
●上貼り
「上貼り」は、既存フローリングを残したまま、その上に新しいフローリングを施工する方法です。戸建て住宅や二重床下地のマンションの場合、既存床の上に厚み12~15㎜の一般的なフローリングを上貼り施工することも可能ですが、厚みを3~6㎜程度に薄くした上貼り専用フローリングもあります。「上貼り」のメリットは、既存床を撤去する手間代と残材処理費用が削減できるため、その分コストダウンできます。しかし、数㎜でも床の高さが上がるため、玄関框や掃き出しなどの納まりの調整や、建具のアンダーカットなどが必要になるケースもありますので、その場合は逆にコストアップ要素も出てきます。
上貼り専用フローリングの施工方法は、製品によって異なりますが、両面テープと接着剤など釘を使わないケースが多く、また厚みが薄い分加工もしやすいため、比較的簡単に施工することが可能です。
ただし、各製品ごとにメーカーの定める施工下地条件、たとえば既存床が合板製フローリングであること、きしみやたわみといった不具合がないこと、などをクリアしている必要があり、特に、既存床が防音直貼りフローリングの場合は、防音直貼りフローリングに施工できる専用上貼り商品でないと、施工後の床鳴りや浮きなど不具合に繋がりますのでご注意ください。
張り替え費用相場について
張り替えにかかる費用相場をいくつかのパターン別にご紹介します。
フローリングには大きく「無垢フローリング」と「複合フローリング」の2種類があり、複合フローリングには、化粧材の種類が挽き板、突き板、シートに分類されます。
詳しくはこちらで解説していますのでご覧ください。
>フローリングの種類
>プロがおすすめする 『失敗しないフローリングの選び方』
>フローリング診断
また、コンクリート下地のマンションの場合は、施工に釘を使用する一般的なフローリングは施工できないので、「防音直貼りフローリング」を採用する必要があります。
下記にフローリング張り替え費用の算出事例を抜粋していますので、ご参考にしてください。
※出典/(一財)経済調査会発行 「積算資料ポケット版リフォーム編2020」
1) 複合フローリングを複合フローリングに張り替えする場合
・施工日数:2日程度 ・施工面積:25.0㎡ ・施工場所:木造食堂、居間
・工事概要:複合フローリングを新規の複合フローリングに変更する。
※下地の状態によっては下地調整が必要となります。
名称 | 価格・仕様 | 数量 | 単価 | 金額 | |
1.解体工事 | |||||
既存フローリング撤去 | 厚12~15㎜程度 | 手間 | 25.0㎡ | 1,650 | 41,250 |
既存巾木撤去 | 木製巾木 高100㎜以下 | 手間 | 17.6m | 540 | 9,504 |
1.小計 | 50,754 | ||||
2.床工事 | |||||
複合フローリング | 単板張り 厚12×幅303×長1818㎜ | 材料費 | 25.0㎡ | 4,050 | 101,250 |
複合フローリング 張り | 手間 | 25.0㎡ | 2,180 | 54,500 | |
ビニル巾木取付け | 厚2×高60㎜ | 材工共 | 17.6m | 370 | 6,512 |
2.小計 | 162,262 | ||||
合計 | 213,016 | ||||
諸経費 | 41,984 | ||||
総計 | 255,000 |
※フローリングは通常、ケース(1坪=3.3㎡入り)で取引されるため、25.0㎡に必要な数量は8ケースとなる。
※この事例は「積算資料ポケット版リフォーム編2020」を参考に当社で算出しました。
2) 複合フローリングを無垢フローリングに張り替えする場合
・施工日数:4日程度 ・施工面積:25.0㎡ ・施工場所:木造食堂、居間
・工事概要:複合フローリングを無垢フローリングに変更する。床の傾斜や床鳴りがある場合は、根太、大引、束立てまで撤去し、床下地から新規に施工する。
※無垢フローリングは色や模様などが均一でないこともあり、温度・湿度の影響も受けやすいため、リフォームに採用する場合には注意が必要です。
名称 | 価格・仕様 | 数量 | 単価 | 金額 | |
1.解体工事 | |||||
既存フローリング撤去 | 厚12~15㎜程度 | 手間 | 25.0㎡ | 1,650 | 41,250 |
床組撤去 | 束立て床 | 手間 | 25.0㎡ | 3,780 | 94,500 |
既存巾木撤去 | 木製巾木 高100㎜以下 | 手間 | 17.6m | 540 | 9,504 |
1.小計 | 145,254 | ||||
2.床工事 | |||||
新規床組 | 大引+根太@303㎜ | 材工共 | 25.0㎡ | 7,750 | 193,750 |
床下地張り | 針葉樹構造用合板 厚12㎜ | 材工共 | 25.0㎡ | 1,930 | 48,250 |
床断熱工事 | ポリスチレンフォーム保温板3種 厚50㎜ | 材工共 | 25.0㎡ | 2,750 | 68,750 |
無垢フローリング | ナラ 厚15×幅90×長1820㎜ ウレタンクリア塗装 | 材料費 | 25.0㎡ | 6,060 | 151,500 |
無垢フローリング 張り | 手間 | 25.0㎡ | 3,270 | 81,750 | |
木製巾木取付け | 米ツガ無垢 厚12×高60㎜ 無塗装 | 材工共 | 17.6m | 1,000 | 17,600 |
2.小計 | 561,600 | ||||
合計 | 706,854 | ||||
諸経費 | 141,146 | ||||
総計 | 848,000 |
※フローリングは通常、ケース(1坪=3.3㎡入り)で取引されるため、25.0㎡に必要な数量は8ケースとなる。
3) 既存フローリングにフローリングを上貼りする場合
・施工日数:2日程度 ・施工面積:25.8㎡ ・施工場所:マンションリビング、ダイニング
・工事概要:既存フローリングの上にリフォーム用の薄いフローリング材を両面テープで直接張り付ける。
※上貼り専用のフローリング材は薄く、下地の影響を受けやすいため下地や床組の状態確認が必要です。また、既存フローリングの材質によっては上貼りが不可能な場合もあるため、ご注意ください。
名称 | 価格・仕様 | 数量 | 単価 | 金額 | |
リフォーム用フローリング | 厚1.5×幅151×長909㎜ | 材料費 | 25.8㎡ | 3,090 | 79,722 |
リフォーム用フローリング 張り | 手間 | 25.8㎡ | 1,790 | 46,182 | |
合計 | 125,904 | ||||
諸経費 | 25,096 | ||||
総計 | 151,000 |
※フローリングは通常、ケース(1坪=3.3㎡入り)で取引されるため、25.8㎡に必要な数量は8ケースとなる。
4) 畳を複合フローリングに張り替えする場合
・施工日数:2日程度 ・施工面積:6畳(9.9㎡) ・施工場所:木造和室(床の間を除く)
・工事概要:畳を撤去し、敷居との高さを揃えるため根太と下地合板で高さを調整し、フローリングを張る。
名称 | 価格・仕様 | 数量 | 単価 | 金額 | |
1.解体工事 | |||||
畳撤去 | 処分費別途 | 手間 | 6枚 | 1,000 | 6,000 |
1.小計 | 6,000 | ||||
2.床工事 | |||||
床下地調整 | 根太+針葉樹構造用合板 厚12㎜ | 材工共 | 9.9㎡ | 5,030 | 49,797 |
複合フローリング | 単板張り 厚12×幅303×長1818㎜ | 材料費 | 9.9㎡ | 4,050 | 40,095 |
複合フローリング 張り | 手間 | 9.9㎡ | 2,180 | 21,582 | |
ビニル巾木取付け | 厚2×高60㎜ | 材工共 | 5.5m | 370 | 2,035 |
2.小計 | 113,509 | ||||
合計 | 113,509 | ||||
諸経費 | 23,491 | ||||
総計 | 143,000 |
※フローリングは通常、ケース(1坪=3.3㎡入り)で取引されるため、9.9㎡に必要な数量は3ケースとなる。
5) カーペットを防音フローリングに張り替えする場合
・施工日数:2日程度 ・施工面積:11.8㎡ ・施工場所:マンション洋室
・工事概要:カーペットを防音フローリングへと変更する。フローリングはLL-45の遮音等級基準を満たしたものを選択する。巾木の交換も必要。
※一般的にフローリングはカーペットよりも遮音性が低く、マンションの防音規定や床下地構造によって求められる遮音等級が異なってきます。リフォーム前に管理規約を確認し、遮音等級を満たすフローリングにする必要がありますので、ご注意ください。
名称 | 価格・仕様 | 数量 | 単価 | 金額 | |
1.解体工事 | |||||
既存カーペット撤去 | 手間 | 11.8㎡ | 960 | 11,328 | |
既存巾木撤去 | ビニル巾木 厚2×高100㎜以下 | 手間 | 10.9m | 160 | 1,744 |
1.小計 | 13,072 | ||||
2.床工事 | |||||
複合フローリング 防音 | 厚11.5×幅143×長900㎜ 直貼り | 材料費 | 11.8㎡ | 6,990 | 82,482 |
複合フローリング 張り | 手間 | 11.8㎡ | 2,730 | 32,214 | |
ビニル巾木取付け | 厚2×高60㎜ | 材工共 | 10.9m | 370 | 4,033 |
2.小計 | 118,729 | ||||
合計 | 131,601 | ||||
諸経費 | 26,199 | ||||
総計 | 158,000 |
※フローリングは通常、ケース(1坪=3.3㎡入り)で取引されるため、11.8㎡に必要な数量は4ケースとなる。
注意が必要な張り替え箇所
以下の場所のフローリングを張り替える場合は、追加料金がかかりますので注意が必要です。
●床暖房を設置している箇所
床暖房パネルなどが入っている場合、既存床材を剥がす際に痛めてしまうケースが大半なので、その場合は、床暖房パネルから新しくする必要が出てきます。
●元が畳の場合
既存床がカーペットや畳、クッションフロアなどの場合は、フローリングを上貼り施工することが出来ないので、張り替えとなります。また、畳からフローリングへのリフォームなど、厚みの大きく違う仕上げ材へのやり替えの場合は床下地の高さ調整が必要となります。
DIYでも張り替えできるの?どんなやり方がいい?
自分らしい暮らしをつくりたいというニーズが高まっており、最近ではインスタ映えを狙った女性によるDIYもブームになっています。比較的難易度は高くなりますが、フローリングの張り替えについてもDIYは可能です。
上貼りの方がDIYにチャレンジしやすい
「張り替え」の場合はかなり難易度が高くなります。のこぎりやバールなど、必要な工具を使いこなすことができ、手順などをきちんと把握していることが前提となります。また、既存の床材がどのようなものなのかだけでなく、床下地の構造がどうなっているかも、理解しておく必要があります。床暖房が入っている場合は、配管工事が必要になることもあるので、その場合はDIYで張り替えを行うのは難しいでしょう。
フローリングでDIYにチャレンジしやすいのは、「上貼り」です。既存床を撤去する必要がないため、上に貼る製品の施工下地条件さえクリアしていれば、手順に沿って施工するだけです。
施工方法についても、上貼り専用フローリングの多くは両面テープと接着剤などで施工ができ、釘を使わないケースも多いので、素人の方でも取り組みやすいでしょう。
ただし、一戸建てではなく、マンションの場合は、管理規約で床材に指定があったり、カーペットの床をフローリングの床に変更することが不可能なケースなどもあります。マンションで床の張り替えを検討する場合は、たとえDIYでも、管理規約を確認の上、管理組合などに事前に相談しておく必要があります。
小さな傷やへこみであれば自分で補修できる
張り替えるほどではないけれど傷が気になる。そんなとき、軽微な傷であればホームセンターなどで手に入るさまざまな専用キットを使って、自分で補修を行うことで費用を安く抑えることが可能です。
傷の程度にもよりますが、すり傷の場合はブラッシュペンで色をつける、小さなへこみ傷の場合は補修用のパテをコテで温めて傷部分を埋め、その上にブラッシュペンで木目柄を描くというのが一般的な補修方法です。さらに細かいすり傷であれば、ワックスがけで目立たなくすることもできますが、その場合は床材や塗装に合わせたワックスを選びましょう。
尚、このような方法は傷を目立たなくするというものなので、広範囲にわたって長い切り傷が入っていたり、表面が剥がれて、基材の合板層まで傷がついているような場合は専門業者に相談した方がいいでしょう。
詳しくはこちらで解説していますのでご覧ください。
>【動画と図解】フローリング・床 傷や・凹みの補修方法とアイテム
フローリングの張り替えが必要な状況やタイミングとは?
フローリングは、内装でありながら躯体の一部でもあり、よほどのことがない限り、床が抜けるなど床としての機能を損なうことはないので、決まった張り替えタイミングのある部位ではありません。従って、経年により傷や汚れが目立ち、意匠的に古臭くなったと感じた時点や、キッチンなど水廻りリフォームをするタイミングで同時に検討することが多いようです。
15~20年に一度のペースで張り替える
上記の結果、フローリングは年数が15年~20年経った頃に張り替えることが一般的です。当然、フローリングは住んでいるうちに経年で傷んできます。品質や使い方にもよりますが、10年程度経つと、傷や汚れが増えてきます。特に窓際や掃き出し部分では、表面のひび割れ、色落ちなどが発生してくることがあります。さらに5年ほど経つと、よく歩く部分の塗装がうすくなったり、下地の環境によっては床鳴りが発生したりするケースもあります。
傷や色落ち、ひび割れ、表面はがれなど、フローリングの経年現象もチェックしながら、キッチンなどの水廻り、外壁などのリフォームのタイミングに合わせて、張り替えを検討しましょう。
フローリングが水浸しになった場合
水廻りからの漏水などでフローリングが水浸しになった場合、一時的には大丈夫そうに見えても、製品のつなぎ目(ジョイント部分)から水が入り込み、基材の合板部分が層間剥離を起こし浮きが発生したり、アルカリ汚染で変色したりする可能性があります。このような場合でも床が抜けてしまうことはありませんが、元のきれいな状態に戻すためには張り替えが必要となる場合があります。
フローリングを張り替えると、お部屋はまったく新しい空間に生まれ変わります。すべてのインテリアのベースとなる床材は、どのような素材を選ぶかによって、上に置かれる家具の見え方をも左右します。それだけでなく、直接素足に触れる靴脱ぎ生活の日本においては、住み心地の満足度にも大きく影響してきます。たかが床、されど床。ぜひリフォームの際はフローリングにこだわってみてください。