床は記憶に残る。
住まいやインテリアの完成度に占める床の割合は、とても大きなものがあります。でも、そのことはあまり知られていません。
なぜ床の存在が大きいか。その理由のひとつは生活の中でまず目に入る場所だからです。実は人の視線は斜め下を見るのが自然です。たぶん二足歩行をすることになったことに関係しているのだと思います。立ち上がって歩くようになった人にとって、足下にはいつも不安がありました。そこで下をしっかり見て歩くようになったのでしょう。床はごく自然に記憶に残るものなのです。
床は同時に、インテリアのグレード感を決める存在でもあります。家を建てたりリフォームするときに、床を安いものにして金額の調整をする人が少なくありません。でも、それは絶対止めるべきです。私が経験してきた数多くのリフォーム現場、そしてご相談の中で、とにかくリフォームの「ケチって失敗、第1位」は床なんです。ただ新しくなったというだけで、少しも魅力的なインテリアにはなりません。その床にお気に入りの家具を置いたら、かえって家具が安っぽく見えてしまう。床は、その上に乗っている物の、すべてのグレード感を決める存在です。逆に床が魅力的であったら、家具を引き立ててくれる 。ワンランクも、ツーランクも上に見せてくれるでしょう。
床が大事な理由は、まだあります。それは、そもそも日本人が持っているのが、イスではなく座の文化だということです。イスの暮らしになっても、私たちは室内で靴までは履きません。子供たちは裸足で駆け回っているし、お父さんも、いつの間にかソファから床にずり落ちて、ソフアを背もたれにして座っていたりします。いくらイスの生活になっても、私たちにとって床は体に触れ、手で触るとても身近なものなのです。
私に似合う、私らしい木の床を選びたい。
リフォームというのは、不具合を直し、汚れた物をきれいにするだけのことではありません。それでは全然楽しくない。そうではなく、これからの20年30年をどう楽しく暮らしてい<か、その舞台をつくるものです。だから私はずっと「過去を繕うのではなく、未来をつくるのがリフォーム」と言ってきました。
だから床はしっかり選びたい。なかでもぜひ使いたいのは木の床。もともと木は自然の生き物ですから、とても親しみがあります。木は温かくやさしい。しかも、その種類は無限と言っていいほどです。硬いものや柔らかいもの、さらさらしたもの、つやのあるもの、もちろん木目もいろいろ。その空間でどう過ごすのか、目的と自分の好みで選ぶ楽しみがあります。
昔は、床に限らず壁紙でも何でも「無難で、飽きが来ないもの」ということを選択の基準にしていました。でも、今は自分らしさを表現し楽しむ時代。床も「私に似合う、私らしいもの」をぜひ選んでください。きっと毎日が楽しくなります。
住宅リフォームコンサルタント
Yuu
一級建築士事務所 OfficeYuu 代表。 長年リフォーム業界の第一線で、数多くの住宅リフォームの相談、プラン設計、工事に携わってきた経験から、本当に価値あるリフォームについて皆さまにお話します。過去を繕うものではなく、未来の暮らしを創る「リライフのリフォーム」を提唱。実践的なリフォームのノウハウを、テレビや雑誌、新聞連載、講演などを通して発信中です。
http://www.ne.jp/asahi/net/rehome/ https://allabout.co.jp/gm/gp/357/