ミラノサローネ2019 レポート
世界中のデザイン関係者が一堂に会するデザインの祭典「Salone del Mobille Millano(ミラノサローネ)」。会期中は181ヶ国から38万人以上が会場を訪れ、今年も新たなプロダクトやデザインが人々を魅了しました。
最も注目されていた新エリア〈S.Project〉は、家具・水まわり・照明などの既存カテゴリーに捉われない、垣根を超えた展示エリアとして、トップブランドから選抜された84社が集結。中でもB&B Italiaが17年ぶりに本会場に戻ってくるなど、開催前から話題を呼びました。また今年はスマート家具や人工知能のデザイン家具など、デザインの領域においても大きな広がりを見せています。ここでは最新のインテリアカラーと建材メーカーから見た木質トレンドをご紹介します。
“highlight” 今年話題性のブランド/メーカーをピックアップ
LOUIS VUITTON
毎年注目度の高いルイ・ヴィトンの「オブジェ・ノマド」コレクション。世界中の著名なデザイナーによる「旅」にインスパイアされたオブジェが並び、今年は新作10点が追加されてた。
GUCCI
グッチはサローネに合わせて期間限定ストア「GucciDécor」をオープン。グッチのシンボルである花や動物といったモチーフデザインとバロックやロココを感じさせる独特の世界観を表現。
HERMES
「Raw material」をテーマに迷路のようなセットの中で新作コレクションの展示を行ったエルメス。石・陶器・竹・レザーなど素材が際立っていた。
nendo×ダイキン
nendo×ダイキンのインスタレーション。約17000本の花の形をした偏光フィルムを使用し、「風」を視覚化することで、新たな空気の感じ方を提案。
Moooi
Moooiは「Tokyo blue」と題して日本の岡山デニムとコラボした新作ソファを発表。日本の染めや加工に対するこだわりが感じられる展示。
Vitra
ユーロルーチェと同じ年に開催されているワークスペース3.0。新しい職場環境の提案として先進的なオフィス提案を実施するブランドが多く見られた。
ベースカラーはベージュ・ブラウンへ
ベースカラーは、ここ数年継続していたグレー・グレージュ系から今年はベージュ・ブラウン系に移行する傾向が見られました。「Molteni&C」「Flexform」「Poliform」など、インテリアトレンドを牽引する有名ブランドの多くが、ソファやラグなどの主要アイテムをベージュ・ブラウン系にまとめたコーディネートを取り入れており、これまでのクールでやや緊張感のある空間から穏やかで暖かみのあるコーディネートへと変化していました。
家具デザインにおいても、大理石やレザーなど、素材は違えども同化する配色でまとめられ、木材でもベージュ・ブラウン系着色の増加が見られます。また壁・天井も同様の配色が使われていたことから、空間における配色同化の傾向が見られました。そこに深みのあるワインレッドやインディゴブルー、ゴールドを感じるマスタードイエローなど、彩度を落としたカラーをアクセントとして加え、曲線的なフォルムや光沢、素材感のあるファブリックと組み合わせることで、柔らかで上質な空間を演出しています。
■ベースカラーはベージュ・ブラウン系に移行
昨年まではグレー・グレージュ系ベースカラーのコーディネートが主流であったが、今年はベージュ・ブラウン系に移行する傾向が見られた。柔らかいフォルムや質感のあるチェアが、モダンな空間の中にもどこか居心地の良さを感じさせる。
■空間における配色同化
インテリアだけでなく床・壁・天井などもベージュ・ブラウン系の配色でまとめられており、空間配色が同化する傾向が見られた。
■家具デザインの配色同化
Poltrona Frauのサイドボード。天板は大理石、扉はレザー、内部はバーチで構成するなど、素材は違えども同化する配色でまとめられており、細部にまでこだわりを感じる。
■アクセントカラー
今年の主なアクセントカラーはこちらの3色。彩度の低いカラーでコーディネートする傾向が見られた。
素材はスーパープライムへ
木質トレンドは今年もオークとウォルナットの2大樹種が継続しています。今年最も多く見られたのはオーク。美しい意匠からキャラクターを生かしたラスティック素材まで、家具デザインの幅を広げられる木質材料として人気の樹種です。一方、昨年に比べて比率が高まっているのがウォルナットです。その背景にはベースカラーがベージュ・ブラウン系に移行してきたこと、また空間配色が同化する傾向に伴い、家具だけでなく床・壁・天 井にもウォルナット材やウォルナット調着色材を採用していることが影響しています。特に今年多く見られた柔らかい色合いのウォルナットは、空間を優しく包み込むような暖かい印象を受けました。
意匠においては、木目が美しく洗練された素材が使われており、材色も濃淡が少なく均一的です。一般的に木材は節などキャラクターの有無や大小によってグレードが分けられます。例年ミラノサローネに出展しているようなトップブランドでは、節や白太の入らない”プライムグレード”が使われますが、今年はそれよりもさらに厳選された”スーパープライムグレード”の素材と意匠表現が多く見られました。意匠グレードが高くなることで突き板意匠の家具が主流となり、突き板の貼り方も多彩で手の込んだデザインが表現されています。
その他、定番化したユーカリや急増中のアッシュ、希少性の高いサペリ・チークなど増加傾向が見られました。
■樹種比率
オーク35%・ウォルナット30%・アッシュ15%・ユーカリ10%・その他10%(サペリ・チーク・ニレetc)
■幅広い意匠のオーク材
意匠性の高い綺麗な素材が見られる一方、オークならではのキャラクターを活かしたラスティックグレードは定番化。
■空間の配色同化に伴うウォルナット比率の増加
家具だけでなく、床・壁・天井にもウォルナット材やウォルナット調に着色された材料が使われており、全体を占めるウォルナットの比率が増加しているように感じる。
■スーパープライムグレードな意匠表現
美しい木目の意匠材が使われており、”スーパープライムグレード”と感じる意匠表現が多く見られた。
※木材のグレードと特徴
■突き板の多彩なデザインパターン
中心に向かって貼り合わせたパターンや矢羽根貼り、異なる樹種をミックスして貼り合わせたデザインなど、突き板ならではの豊富な意匠表現が見られた。
■今後注目したい樹種
・アッシュ
ナチュラルな色合いから木肌が白く美しいものまで、素材の幅広さを感じる。
・ユーカリ
すでにサーモ処理された状態で定番化。 その多くは柾目を生かしたデザイン。
・サペリ
サペリの照りを活かしたグレー着色。
・チーク
カッシーナのショールームにて展示していたチークのテーブル。