ミラノサローネ2018 レポート
今年のミラノサローネは、6日間に188カ国・地域から、過去最高の43万4,509人が来場。これは隔年で開催されるキッチン・バスルームの見本市「ユーロクッチーナ」が開催された2016年と比べ16%増で、昨年比に至っては26%もの増加になります。
活況を呈した今年のミラノサローネでしたが、建材メーカーの視点から今年のトレンドを一言でいうと、『天然木・大理石といった“本物素材”のさらなる台頭』です。昨今の世界的な脱プラスチックのトレンドは、インテリアの世界にも大きな影響を与えており、そのことが人の意識を今まで以上に“本物素材”へ向かわせているように感じます。それでは、今年のインテリア全般のカラートレンド、そして木質トレンドについて報告いたします。
今年もっとも印象に残ったベスト3
年々注目度を増すミラノサローネには、その高い宣伝効果に期待し、また、新たなビジネス機会の創出やブランディングを目的として個人のデザイナーから世界的な巨大企業まで様々な人・企業が出展しています。今年も趣向を凝らした展示やインスタレーションからたくさんの刺激と気づきを得ることが出来ましたが、その中でも特に印象的だったものを3つご紹介します。
LOUIS VUITTON
たくさんの革でできた花が天井から吊るされた幻想的な空間。照明の演出でVUITTONの革のカット技術を際立たせつつ、美しいブランドの世界観を作り上げていた。思わず「すごい…!」と声が出る展示でした。
Panasonic
創立100周年を迎え、新しいデザインのテーマとして「TORANSITIONS(遷移)」を掲げるパナソニックが、目に見えないもの、人の気持ちや体験までもデザインしていくという強い意志を込めたインスタレーション。「Air Inventions(空気の発明)」がコンセプト。
Kartell
プラスチック家具のトップブランドが突板の家具を発表。昨今の環境問題における世界的な脱プラスチックトレンドを象徴するかのようでインパクトがあった。ちなみに写真のフィリップ・スタルクが持ち上げているのはアッシュ(タモ)の椅子です。
カラートレンド
グレージュをはじめとするアースカラーが継続
ベースカラーは、ここ数年続いているグレー、ブラウン、ベージュなどのアースカラーが継続しています。特にグレージュ、トープ(もぐらの色・グレイッシュブラウン)が多く見られました。差し色としてオレンジ、イエロー、辛子色、ブルーグリーンが使われています。また、光の当たり方や見る向きによって色の見え方が微妙にかわる、ベルベットやベロアなど光沢のある生地、光干渉によってシャボン玉のような虹色に見えるガラス、樹脂といった素材を使うのも今年のトレンドのようです。インテリアのトレンドはファッションからくると言われていますが、年々そのタイムラグは小さくなり、ほぼ同時進行的にファッションと連動したトレンドとなっています。
ウッディトレンド
グレイッシュカラーとハイグロス仕上げ
木質トレンドは、オークとウォルナットの2大樹種トレンドが継続。今年はオークの比率が高まっている印象です。着色することが多いオークは、ホワイト、ブラック、モカブラウン、グレーが多く見られますが、中でもグレーは薄いものから濃いものまで幅広く見ることができます。オークをはじめ、アッシュ、エルム(ニレ)などの環孔材樹種への着色は、オープンポア(道管の凹凸を残す)塗装にしたり、ブラッシング加工を施したうえに、道管部分とその他の部分に色差を付けるなど、木目を際立たせることにより、着色をしても素材感を損なわない仕上げが多く見られました。ツヤ感に関しては、マットなものが多いのですが、ハイグロスなものの比率も少し高まっているようです。とくに「照り」のある樹種はツヤを上げることで天然木ならではの美しい光沢が生まれます。これは、先に述べた光の当たり方で色の見え方がかわる素材使いのトレンドと相まった傾向なのかもしれません。