Vol.6【照明計画のポイント】ダーク系フローリングでも明るさ感を出すには? | フローリング総合研究所
2020.05.27

照明計画のポイント

 

住まいの照明を計画するとき、一般的には畳数表示や、lm値(ルーメン/LED電球の明るさの指標)の目安から、器具の明るさ(照度)がスペースに対して十分かどうか、が焦点になることが多くあります。また好みのデザイン器具を選びたい、という見た目重視の選択もあるのではないでしょうか。

しかし、実際のインテリア空間でぜひおさえたいポイントは「明るさ感」です。
*「明るさ感」:空間が明るく感じられるか、という感覚のこと

「明るさ感」を出すには?

ずばり、空間の「面」を明るくする照明手法が有効です。
「面」とは、空間をつくる壁面や天井面。具体的には、壁や天井など室内の「面」に反射させ、その照り返しで明るくする間接照明やダウンライト、スポットライトも壁寄せに配置し壁面を照らすようにすると「明るさ感」がアップします。

  • 壁・天井全体に光が当たっていない空間
  • 壁・天井全体に光が当たっている空間

壁や天井など「面」を照らすよう意識すると「明るさ感」がアップする。
左|壁・天井全体に光があたっていない空間
右|壁・天井全体に光があたっている空間(明るさ感アップ)
(画像協力:大光電機株式会社)

モデルハウス例
モデルハウス例

玄関ニッチ(左面)を照らす間接照明・スポットライトと、正面壁にはダウンライトを配置。「面」を照らすことを意識したモデルハウスの玄関スペース。
(画像提供:株式会社菜インテリアスタイリング)

素敵なインテリアには、必ずと言って良いほど「光」が大きな役割を果たしています。一方、照明は空間の中で、常に床・壁・天井など他の内装材と関係しながら存在します。つまり住まいの照明は、器具単体で考えるのではなく「内装との関係」をしっかり考慮することが、結果的にインテリアの完成度と、その魅力を高める可能性へとつながるのです。

内装と照明 その1|反射率

同じ照明でも、内装色によって「明るさ感」が変わるのは、反射率によるものです。内装色の白と黒を比較した場合、反射率は約16倍の差があります。

反射率

間接照明を計画し、効率よく反射させるためには、反射率の高い白系の内装材を選びましょう。
例えば、照明環境を変えず、インテリアを明るくしたい場合には、反射率の高い色をより多い面積で内装に取り入れます。カーテンの色を明るくしたり、ソファに明るい色のカバーをかけるなど、手軽な方法でも可能です。

また一方で、明るさも必要だけどシックなインテリアがお好み、という方もいらっしゃると思います。その場合、ダーク色の内装材や建具、家具などを選ぶと暗くなるのでは?と心配される方は、その他の場所に、照明と内装で「明るさ感」をつくる方法を検討してみてください。空間は床・壁・天井など複数の面で囲まれています。たとえ一面がダーク色であっても「明るさ感」を別の場所でつくることで、空間全体を明るい印象にまとめることができます。
例えばフローリング選びのときには、単体の色だけで判断せず、空間全体の照明による「明るさ感」とのコーディネートを取り入れてはいかがでしょう。照明を上手に活用すれば、ダーク系の落ち着いたカラーも含め、インテリアの選択肢が広がりそうですね。

ダーク色の床の施工例

ダーク色のシックなフローリングに、照明で明るさ感を演出したコーディネート。
(床:LiveNaturalブラックウォルナット|朝日ウッドテック株式会社)

内装と照明 その2

照明は内装材との組み合わせ次第で、様々な表情のフォーカルポイント(見せ場)をつくります。

■立体感のあるウッドパネルは、照明効果により陰影がリアルに。

  • 立体感のあるウッドパネルを使った例

(壁:クールジャパンスクエアタイプ|朝日ウッドテック株式会社)
(画像提供:株式会社菜インテリアスタイリング)

■フロック加工の立体壁紙と間接照明の組み合わせ

  • フロック加工の立体壁紙を使用した例

(画像提供:株式会社菜インテリアスタイリング)

■家具上、シャンデリアから天井を照らした例。天井面に黄金色の壁紙を選び、温かく柔らかな印象の光環境に。

シャンデリアを天井から吊るした例

(画像提供:株式会社菜インテリアスタイリング)

照明ワンポイント!

間接照明は影ができにくいため、読書や勉強など、作業の灯りとしてもおすすめです。

  • ダウンライトと手の影
  • 間接照明と手の影

左|ダウンライトと手の影
右|間接照明と手の影
(画像協力:大光電機株式会社)

テレワークの普及が広がる今、リビングやダイニングの一角で仕事をされる方も多いのではないでしょうか。その場合、照明の落ち着いた明るさはそのままに、必要な手元だけにスタンド照明などをプラスする「タスクライト」の手法がおすすめです。

また同時に、明るさを抑えた環境は健康にも良い影響を与えます。夜間明るすぎる白い光を浴びると、眠りホルモン(メラトニン)の分泌を阻害し、睡眠の質の低下を招くと言われています。必要最小限の光環境で過ごすことは、省エネ、ECOであることはもちろん、健康にもつながる照明の賢い使い方だと言えます。

有機EL照明のスタンドライト

有機EL照明(OLED)のスタンドライト。面発光のため、光源に近い距離で使用しても、目にやさしい。
スワン電器株式会社|株式会社カネカ製有機ELを採用
(画像提供:株式会社菜インテリアスタイリング)

照明を上手に活用するには、内装との関係、特に相乗効果を生み出す「コーディネートの視点」が大切です。

菜インテリアスタイリング尾田恵

インテリアデザイナー
尾田 恵 ODA MEGUMI
株式会社 菜インテリアスタイリング/一般社団法人 日本インテリア健康学協会(JIHSA)代表
住宅、福祉施設、TV番組など様々なインテリアコーディネート・デザイン、商品開発、情報発信に携わる。 現在は幅広い活動で培った知識・スキルを活かし、身体と心の健康を目指したインテリア・メソッド「Active Care®」(アクティブ・ケア)を提唱。

●所属
公益社団法人日本インテリアデザイナー協会(JID)正会員

経済産業省 JAPAN DESIGNERS登録
帝京大学大学院公衆衛生学研究科
照明学会会員
日本頭痛学会会員
http://sai-interior.co.jp/
http://jihsa.jp/

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