06
朝日ウッドテックで「働く」ということ
ブランドデザインとは、
世界中の誰もが同じ言葉で、
ブランドの魅力を語れるようにすること。
上羽 嘉子
マーケティング部 デザイン室 室長
01
感覚で決めて
理屈で納得する。
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感覚で決めて
理屈で納得する。
2016年の秋、上羽嘉子は中国のショールームデザインに1分1秒を争っていました。ところが、デザイン完成の直前になり区画自体が変更になることを伝えられたのです。床面積や入口の位置から変更したい、と。
朝日ウッドテックのショールームは、入口から出口までの流れを大切にしています。まず大面積で床を組み、靴を脱いで触れていただいて感性に訴えかけます。その後に、技術的な説明やこだわり訴求をパネル展示等で行います。区画変更は、その構成を変えることになり、納得できるレイアウトになるまで妥協できず、施工が終わったのは当日の朝でした。
「いくら素晴らしいこだわりがあっても伝える力がないと、価値がないのと同じだと思っています。私たちマーケティング部デザインチームの役割は、培ってきた技術力やこだわり・魅力を、ユーザーの視点で伝わるように表現することです。その手段として言葉やビジュアルを駆使し、感性に訴えかけられるカタログやショール—ムのデザインを行います。」
「やっぱり感動させられるものじゃないと意味がないと思います。感動は常識を超えたときに生まれますが、建材の展示会ってサンプル商品をただ並べているだけというものが多くて単調でした。空間ごと体験として伝えることで実際の住まいの感覚をリアルに感じると同時に私たちの伝えたい品質も伝わるのではないでしょうか。その思いでプロデュースしたのが日本の本社や支店のショールームです。」
その後、海外でのマネジメントの手を離れた多店化を念頭に入れて、図面の詳細スタイリングや訴求パネルから照明器具の温度差、演色性、配光まで細かく指定した標準仕様となるショップアイデンティティの制作が進んでいます。
伝えることへの注力はこんな取り組みにも現れています。ショールームには商品開発を行う商品部の社員も、3ヶ月に一回は交代で入ることにしています。作業着をスーツに着替え、カウンターに立ってお客様を案内することで自社商品を自分の言葉で語ると共に、お客様の「生の声」をヒアリングできるようにしています。力を身につけています。現場主義の現場とは、作業場のことだけではありません。
02
カタログではなく、
スタイルブックであること
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カタログではなく、
スタイルブックであること
「ライブナチュラルプレミアム」をはじめとした商品の紹介は冊子にもアイデアが込められています。ライブナチュラルプレミアムの床をベースに広がる暮らし・空間を写真で伝え、シンプルで上質なデザインは、いつまでも手もとに残しておきたくなります。
「カタログと呼ばずにスタイルブックという名前にしたのは、ひとつのこだわりです。できるだけ実際のお住まいの空気感を伝えたくて、1号目は1年半かけて4物件を撮影しました。いずれも、オーナー様の暮らし方をそのまま写し撮りました。日々の生活のなかで床と人がどのような関係性にあるかをイメージできるようにオーナー様の暮らしそのものをひとつのスタイルとして提案したんです。」
上羽はこう続けて語ります。
「営業でお客様にプレゼンするみんなに、恥ずかしい思いをさせたくありません。自社商品に自信を持って語ってもらいたいじゃないですか。そのためにブランドをつくり、アイデンティティをつくり、スタイルブックをつくります。会社全体で取り組んだ世界的なデザイナーnendoの佐藤オオキさんとのコラボもブランド価値創造のチャレンジでした。」
営業が顧客に提出する提案資料にしても、PowerPointで営業が作ったシートではなく、マーケティング部がデザインしたシートが何千枚もストックされていて、もしブランディングに沿わないデザイン要素が見られたなら営業に怒ることもあるとか。最近は提案前に見て欲しいと連絡が入ることも増えていて、営業の資料制作スキルも高まってきているそうです。そうした資料1枚にもブランドが表れるというこだわりが、既存の床材にはない着実なブランド力を育てています。
03
ミラノサローネから学ぶ、
素材の語り方
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ミラノサローネから学ぶ、
素材の語り方
マーケティング部は毎年イタリアのミラノで開催されるミラノサローネという展示会を視察しています。そこで木のトレンドを調査し、後日社内向け、社外向けに報告会を開いて情報を共有しています。
「どういう床と家具を組み合わせているか?空間全体で見て活用できることはないかにアンテナをはっています。日本では普通は1日で設営するところを、ミラノでは1ヶ月もかけて会場構成をしているブースもあって、その展示方法を見るだけでも参考になりますね。」
ミラノでは毎回、ものづくりに対する刺激をもらって帰り、それが次のチャレンジにつながっていくのだと言います。
「ブランドは継続が大事です。どこかで途絶えると終わります。ブランドのアイデンティティとして決めたことを末永く守りながら攻めていくことです。新しいものを取り込みながら進化していかないといけない。それを考え続けるのがマーケティング部の使命です。」
また、中国で仕事をして初めて意識したこともありました。
「中国では日本よりも様々な国の床が手に入る状況があります。床を選びにくる人は床のことをよく調べよく知っています。この差を感じつつこれからは日本の住宅を良くするために素材の魅力を多くの人に語ることで、日々の生活を豊かにしていきたいですね。日本はもともと素材に敬意を払う文化であったはずです。永く使えるよう縁側をぞうきん掛けしたり、畳をほうきで掃いたり、毎日少しずつ手を加え、素材を大事に扱ってきた文化のはずです。機能や合理さを優先しがちな今、その文化を見直すきっかけが私たちのつくる天然木の床になれば嬉しいですね。」
社内はもちろん顧客、ユーザーまで、同じ言葉で自社商品の魅力を語れること。これこそブランドをつくる近道と言えるでしょう。