COLUMN #9
N P O 法人日本ドッグマナー協会 理事 石田えり
朝夕に街を歩くと、愛犬を連れてお散歩している飼い主さんをよく見かけます。なぜ、犬には散歩が必要なのでしょうか。外に出ることでいろいろな情報を得ている、他の犬とコミュニケーションしている、おしっこやウンチなどの排せつのため、運動のため… 。それぞれのご家庭で理由はさまざまありますが、愛犬とのお散歩を楽しみながら、愛犬の安全を守り、他の犬や飼い主さんや周りの方たちに迷惑をかけない。そんなお散歩とマナーのポイントについてお話しさせていただきます。
多くの自治体では、条例で飼い主の係留義務を定めていて、ノーリードでの散歩は条例違反に該
当することがありますし、犬の苦手な方には恐怖感を与えてしまうことがあります。
また、突然の飛び出しなどで、車や自転車などと事故を起こすことで愛犬の命を危険にさらすこと
にもなりかねません。リードは必ず着けるようにしましょう。
親子で一緒に愛犬の散歩に行き、小さなお子さんが愛犬のリードを持つ。一見ほほえましいシーンですが、犬は驚いたり大きな刺激を受けたりすると、突然走り出したりすることがあります。体重の軽い小型犬だから…などと安心せず、しっかりコントロールできる人がリードを持つようにしてください。
人が多かったり他の犬がいる場所では、不意の事故に遭ったり、または自分たちが起こしてしまうことがあります。他の犬からの噛みつき、他人や他の犬への噛みつきなどの万一の事故防止のため、また車や自転車などとの接触を避けるためにも密集した場所ではリードはなるべく短く持つようにしましょう。
きちんとしつけができているワンちゃんでも、道路や公園などにある危険な物をなめたり食べてしまうことがあります。また前述のように車や自転車、人、他の犬との接触などの危険性もありますので、万一の事故に備え、ぜひお散歩の間は常に愛犬の動きを把握するようにしてください。
公園内のエリア全てがワンちゃんO Kとは限りません。まずはお散歩可能・不可能のエリアがあるか確認してください。公園には多くの人がいます。特に排せつ物に関するマナーにも気を配り、また、花壇や芝生などを荒らさないように注意してください。
犬が苦手な人もいることを考えて、狭い道でのすれ違いではリードを短くし、できれば自分が立ち止まると安心していただけると思います。また、犬が好きな小さなお子さんが急に近づいてくることもあります、驚いて吠えたりとびかかったりしないよう注意してください。危ないな、と思うようなことがあれば犬を抱っこするのも安全な方法です。他の犬との挨拶は、まず飼い主さんに大丈夫か確認してから。お互い初対面だと不意の事故( 噛みつきなど)が起きることもあります。様子を見ながら注意して行うようにしてください。
排尿はできれば側溝や排水口周辺でさせて、持参した水で洗い流すようにしましょう。フンはウンチ袋などで回収して、必ず持ち帰るようにします。どちらも住宅の前や出入口の近くなどでは、住人の方が不快に思われることがありますので、避けるように配慮してください。
お散歩ではたくさん歩いたり走ったり、家の中とは違う行動になりますので、いろいろな動きや反応、排せつ物の状態などで愛犬の状態を知ることができます。次のような反応や状態があった場合は要注意です
□「お散歩行こう」と言ったときの反応がいつもと違う
□ 行きたくないそぶりを見せる
□ 足の動きがおかしい
□ 走るのを嫌がる
□ 突然動き( 歩き)が止まる
□ おしっこの色がいつもと違う
□ 便が柔らかい( 下痢など)、色がいつもと違う
などが続く場合は、早めに専門家や動物病院に相談されてください。
夏は地面の温度が高くなり、犬は人より地面に近いためより暑く感じます。短時間でも熱中症になることがありますので、できるだけ日中の散歩は避け早朝や日が沈んでからなど、地面の温度が低い時間帯を選ぶようにしましょう。また、マンホールの蓋やグレーチング( 排水溝などの格子)などは、とても熱くなっている場合がありますので、ヤケドに注意してください。
お散歩は毎日のことですから、必要なものをすぐに持ち出せるように「お散歩バッグ」を用意しておくと便利です。バッグの中に必要なグッズを入れておけば、忘れ物もなく、準備する手間もかからず、さっと出られます。いろいろお気に入りのアイテムを見つけてお散歩をさらに楽しくされてください。
その他、ショッピングモールやカフェなどに出かける時には以下のアイテムを用意しておくと便利です。
公共の交通機関を利用する際には、犬をキャリーバッグやクレートに入れる必要があります。
● J R 東日本では、タテ+ヨコ+高さの合計が1 2 0 センチ以内の動物専用のケースに入れること、ケースと動物を合わせた重さが1 0キロ以内となっており、手回り品料金が1 個につき2 9 0 円かかります。( 2 0 2 2 年3月現在)
● J R 西日本では、ドックスリングは全身が入っていても不可で、ペットカート(ペットバギー)も分離できないものはサイズ的に不可となっています。( 2 0 2 2 年3月現在)上記は鉄道会社の一例ですが、各交通会社によって内容が異なりますので、楽しいお出かけのためにもぜひ事前に確認されてください。
犬O K にも2つのケースがあります。ひとつは愛犬を連れて訪れることを前提としたお店で、もうひとつは犬を連れて入ることも可能だけど基本的に犬を連れていないお客様を前提としたお店です。それぞれで犬に対する周りの許容度もお店の対応も異なってきますので、違いを理解しておく必要があります。どちらのケースでも利用の際のルールが決められていますから入店時に確認されてください。また、抜け毛の多い犬種の場合、あらかじめブラッシングしておく、毛が飛ばないように服を着せておくなどの配慮をされてください。
犬を連れて買い物ができるショッピングモールやホームセンターなどが増えています。それぞれでルールがあり、例えばリードでの歩行はO K 、店内はバッグはO Kでも抱っこは不可など、お店ごとにも様々なルールがありますので入店時に確認してください。また、万一の「そそう」を考えてマナーベルトの着用をお勧めします。
ドッグマナーとは「思いやり」や「優しさ」そして「人への心くばり」のことであって、特別難しいことではありません。「なぜそうするのか」という背景を想像すること、そして相手の気持ちを考えた行為こそが大切なのだと思います。マナーを考えることで、愛犬家だけでなく、犬を飼っていない方々や、飲食業、ペット産業各社の皆様と共に、人と犬と一般社会の和やかな共存・共生した社会を目指していきましょう
石田えり
N P O 法人 日本ドッグマナー協会 理事
愛玩動物飼養管理士1 級/日本ドッグヨーガ普及協会インストラクター。著書に「I L o v e D o g s 犬とおしゃれに暮らす方法」、「あなたにほめられたくて-犬の十戒」をプロデュースなど執筆も多数。