COLUMN #8
ウッディープランニング代表 梅津基世人
住まいの中で一番問題になりやすいのが「床」です。現在ではフローリングが一般的ですが、表面が柔らかいフローリングの場合は爪による傷がつきやすいですし、固い床の場合はソファなどからの飛び降りで骨折するケースがあります。( 私の知り合いのヨークシャーテリアちゃんも30c m 程の高さからの飛び降りで骨折してしまいました)
また、滑りやすい床の場合、転倒が原因でケガや骨折を起こすことがありますし、「膝蓋骨脱臼」や「椎間板ヘルニア」などの関節の病気を誘発したり悪化させる可能性もあります。フローリングを選ぶ際は、あらかじめ滑りにくい加工がされたものを選ぶことが重要ですが、現在ある床を剥がすのではなく上貼りができる薄いリフォーム用の床もあります。特に滑りや関節疾患が心配なワンちゃんの飼い主さんは、そのような商品を使ってのリフォームを検討されてはいかがでしょうか。
じゅうたんやカーペットだと、滑りにくい点は良いのですが、汚れや臭いが気になります( 特に体脂が多かったり、よだれの多いワンちゃんの場合はなおさらです)タイルカーペット( 5 0 c m 角ぐらいで剥せて洗えるもの)を敷き詰めて使うケースもありますが、実際に洗ってみると分かりますがとても重い上に中々乾かず本当に苦労します。私のおすすめは、滑りにくく傷のつきにくいフローリングを使い、飛び降りしやすいソファなどの前には部分的に小さなラグやカーペットを敷くことです。こうすれば滑り対策と飛び降りなどに対するケガ対策にもなり、汚れや臭い対策としても有効です。
家の中を自由に動き回らせている飼い主さんも多いのですが、心にとどめておいて欲しいことがあります。それは今は元気で筋力もあるワンちゃんも、いずれ歳をとり筋力が落ち、肉球も固くなるということです。若い時に階段の上り下りを覚えたワンちゃんは、歳をとってもそうしようとします。特に危険なのは下りで、踏ん張りがきかず滑って転落事故を起こす可能性が高くなるということです。今はフリーにしていても、ある程度筋力が弱まってきたら階段にゲートを設置し、動きを制限してあげて下さい。私は万一の事故が嫌なので最初から階段の上り下りはさせないようにしました。できれば家族で取り決めをされて下さい。
キッチンは誤食と人との接触による事故が起きやすい場所です。私の体験談をお話しします。
私は料理が好きなので自分でキッチンに立ち、いろいろな調理をします。犬にはキッチンに立ち入らないようしつけをしていたので、特にゲートは設置していませんでした。あるとき包丁を取り上げようとして手を滑らせてしまい、床に包丁を落としてしまいました。いつもはいない犬がそのすぐ横にいて、あと1 5 c mぐらいで背中を突き刺すところでした。本当にゾッとして、それ以降しつけと万一の事故は違うと考えるようになりゲートを置くようにしました。
また、熱い鍋を持って移動する時に、足元に犬が来ていたら人も犬もとても危険です。開放型のキッチンの場合は、ゲートによる制限ができませんので、調理の際は別の部屋に入れるかサークルなどで動きを制限しておくと安心です。誤食ですが、犬に危険な食べ物、特に料理の材料だと玉ねぎ、ねぎ、にんにく、いか、えびなどが代表的ですが、食べてしまうと命に関わる場合もあります。材料の残りを捨てる際や食べ残しの生ごみなどはポリ袋などに入れて放置せず、蓋つきのゴミ箱に入れるようにされて下さい。
車通りのある道路に面した住宅の場合、玄関や駐車スペースのすぐ横が道路というレイアウトもあると思います。万一の飛び出し防止には、玄関内にはゲートやリードフックの設置が有効です。また玄関横( 外)にもリードフックがあるとお出かけから帰ってきた際に、一旦そこにリードをかけてから玄関を開けたり車に荷物を取りに行ったりできるので便利で安心です。なお、車でお出かけした際は安全のために、
● 一人で出かけた場合は降りる前にリードをつけてから降ろす
● 同乗者がいる場合は玄関内まで抱きかかえて移動する( 小型犬の場合)
などの対策を取られて下さい。
お庭が広いお家だと、庭をドッグランのように解放するケースもあると思います。一番起こりやすい事故は「脱走」です。
犬は見た目よりずっと細い隙間を抜けていきます。既存のフェンスの間隔を確認して、必要によって追加のフェンスを作るなどの工夫が必要です。注意点としては「ネット」は爪の引っかかり事故を起こしたり、逆に爪を引っ掛けて登って脱走するケースもあるので避けて下さい。また、ダックスフンドやテリア系など穴掘りが得意な犬種の場合、フェンスの下を掘って逃げ出すこともありますし、ジャンプが得意なボーダーコリーなどは人の背以上の高さのフェンスが必要など、犬種特有の注意点もあります。なお、事故とは直接関係しませんが、吠え声、抜け毛( 風で飛びます)、排せつ物(ニオイ)などは近隣トラブルになりやすく、人間関係を悪化させる原因にもなりますので、十分配慮されて下さい。
外がのぞけるような隙間がある場合には、その間隔に注意して必要であれば対策をされて下さい。
見落としがちなのが感電事故です。コンセントにおしっこをかけて感電したケース、超小型犬が爪をコンセントの穴に入れて感電したケースがあります。新築であればプランニングの段階でコンセントの位置を腰高にするなどの方法もあります。既存のコンセントで危ない位置にあるものはカバーをつけると安心です。また、配線類・ケーブル類をかじって感電するケースもあります。配線を隠す、配線カバーを付けるなどして対策をして下さい。
家族が誰もいなくなる場合は、今まで述べたようなケガや事故が起きてもすぐに対処できませんので、、できれば動きを制限した方が安全です。飲み水やトイレスペースのある部屋でドアを閉めておく、または水とトイレを設置したサークルに入れておくのがおすすめです。どちらも静かな場所で、クレートなどの寝場所も用意しておくとより安心できます。また、暑い時期は短時間であっても直射日光が当たらないようカーテンを引いておき、エアコンを入れておくことも忘れないでください。
犬と暮らすようになってから気づくことは意外に多いものです。それは新しい発見であったり、楽しみであったりすることが多いのですが、時にヒヤッとすることもあります。私は幸いにして重大な事故にあったことはありませんが、知っておけば防げる事故やケガもあるはずです。このコラムが皆さんと愛犬との暮らしに、少しでもお役に立てれば幸いです。
梅津基世人
ウッディープランニング代表。「愛犬との安全・健康・快適な住まい」をテーマに、飼い主や事業者のコンサルタントとして活動。愛犬家住宅プランニングガイドブック、愛犬との暮らし読本のプロデュースほか雑誌企画なども。