COLUMN #72
動物医療技術師 石川 美代子
皆さんは愛犬の歩き方や動作をよく観察していますか?ちょこんとしたつま先立ちや後ろ足を伸ばす仕草はとても可愛らしいものですが、病気のサインかもしれません。特にトイプードル、チワワ、ポメラニアンなどの小型犬に多くみられる「パテラ(膝蓋骨脱臼)」は進行すると歩行困難を引き起こすこともあるため、早期発見と適切な治療が重要です。
この記事では、犬がつま先立ちをしたり後ろ足を伸ばす理由、パテラの主な症状、治療法や予防法を紹介します。大切な愛犬の健康を守るため、ぜひ最後までチェックしてください。
犬は本来「趾行性(しこうせい)」と呼ばれるつま先だけで地面を蹴る歩き方をする動物で、獲物に気づかれないよう音を立てずに近づいたり、長距離を速く走ったりするのに適しています。そのため、犬がつま先立ちで歩いていること自体は特に問題ありません。
一方で、注意すべきつま先立ちもあります。通常、犬の後ろ足のかかとはやや後ろに出ているものですが、脚全体が棒のようにまっすぐになっていることが多い場合は注意が必要です。足の筋肉が緊張して硬くなっているか、パテラなど膝関節に問題があるサインかもしれません。
特に、足や関節に痛みを抱えている犬は過度につま先立ちになり、足をかばうように歩いたり散歩を嫌がったりすることが多いでしょう。高齢の犬では、加齢による筋力低下や関節痛によって一時的に過度なつま先立ちになるケースもありますが、若い犬や成犬でこのような状態が見られる場合は病気の可能性が高いため、できるだけ早く動物病院で診察を受けるようおすすめします。
犬が後ろ足をピーンと伸ばす仕草は寝起きや運動前、リラックス時によく見られます。通常は心配ありませんが、小型犬に多い「パテラ」という病気のサインである可能性も考えられます。
パテラとは、膝の関節にある「膝蓋骨(しつがいこつ)」というお皿状の骨が脱臼してしまう病気です。パテラを発症した犬は、正常な位置からずれてしまった膝蓋骨を自力で元の位置に戻そうとして、後ろ足を伸ばすことがあります。またスキップするように歩いたり、足を浮かせて3本足で歩いたりする犬もいます。
<そのほかのパテラの主な症状>
・足をかばうように歩く
・座るときに足を投げ出す
・運動を嫌がる
・膝の関節を触ると嫌がる
膝が「カクン」と音を立てたり、優しく曲げ伸ばしした際に引っかかるような感触があればパテラの疑いがあります。少しでも気になる症状があるときは早めに動物病院を受診し、詳しい検査を受けることが大切です。
なお、パテラには先天性のものと後天性のものがあり、多くが先天性のパテラです。特に小型犬は生まれつき膝蓋骨が脱臼しやすい犬が多く、パテラ発症のリスクが高いとされているため、日頃から歩き方をよく観察したり、なるべく垂直方向へのジャンプをさせないように注意しましょう。
落下や転倒など、後天性のパテラを引き起こす事故については、以下の資料もご覧ください。
■小型犬と暮らす際のポイントやシニア期の注意点は、以下の記事でも紹介しています。
・跳ね回るトイプードル!やがては老犬になる「元気な小型犬」の健康管理
<参考URL>
https:// xn--hhrx3xt0jt8h4kenrxmi6a.com/sick/dog/patella/
パテラは命に関わる病気ではありませんが、放置すると歩行困難に至る可能性があります。初期には症状が現れないことも多く、気づかないうちに悪化してしまうケースも少なくありません。
診断は、獣医師による触診や歩行検査、レントゲン検査によって行われます。歩行検査では歩くときの足の運び方や体重のかけ方などを確認します。さらにレントゲン検査で骨の変形や関節の状態、ほかの病気の有無などを調べた後、膝を曲げ伸ばしして膝蓋骨の脱臼の程度や方向、痛みの出方などを確認し、症状の度合いをグレード1~4に分類します。
パテラの治療はグレードによって異なり、1~2の軽度な場合は運動制限、体重管理などの内科的治療が中心で、サプリメントを服用するケースもあるでしょう。3~4の重度な場合は、膝蓋骨が適切な位置に収まりやすくなるように膝の構造を調整する手術が推奨されます。
なお、パテラを予防するには適切な体重管理のほか、滑りにくい室内環境を整え、過度な運動を避けることが重要です。膝への負担を軽減するため対策を徹底し、愛犬の健康を守りましょう。
■体つきや生活環境によるパテラのリスクについては、以下の記事で解説しています。
・コーギーやミニチュアダックス など、人気の短足犬に脱臼が多い理由
<参考サイト>
https://midori-vet.com/information/department/orthopedic/patellarluxation/
https://minerva-ah.com/column/sick/patella-ope/
つま先立ちや後ろ足を伸ばす仕草は可愛らしい反面、病気のサインという可能性もあります。特に小型犬に多いとされるパテラは進行すると歩行が困難になることもあるため、早期発見・早期治療が大切です。
また、適切な体重管理や滑りにくい環境づくりはパテラの予防につながります。「Live Natural for Dog」は小型犬の足腰に配慮した滑りにくい塗装仕上げで、犬に優しいフローリングを実現しました。高齢になってからはもちろん、若い頃からのケアは愛犬の生涯の健康につながります。天然木の温もりあふれる美しいフローリングで愛犬とより快適に過ごしたいと考えている方は、ぜひ導入をご検討ください。
石川 美代子
犬の管理栄養士、動物ケアスタッフ、動物医療技術師、犬の美容師(トリマー)。卒業後は動物看護師として動物病院に勤務し看護業務に従事。現在はwebライターとして主にペット関連記事の執筆、ペット用品・記事の監修などを行う。