COLUMN #71
動物医療技術師 石川 美代子
「犬は甘いものが好き」とよく聞きますが、実際のところはどうなのでしょうか?甘味(あまみ)などの味を感じ取る味蕾(みらい)という器官は人間だけでなく犬の舌にもありますが、犬の味覚や甘味の感じ方は人間とは少し違っています。
この記事では犬はどのように味を感じているのか、その仕組みを解説し、愛犬に与えてはいけない危険な食べ物や誤って口にしてしまった場合の対処法も紹介します。正しい知識を身につけて、愛犬との毎日をより楽しく安全に過ごしましょう。
人間と同じように、犬も甘味、酸味、苦味、塩味、うま味の5つの味を感じることができます。特に甘味と苦味、うま味には敏感で、多くの犬が甘いものを好んで食べる傾向があります。これは祖先であるオオカミが高カロリーの食べ物を求めていた頃の名残と考えられており、なかでも果物の果糖、砂糖のショ糖、母乳の乳糖など天然の甘味を好むといわれています。
一方、苦味成分や添加物を含む人工甘味料についてはあまり好まない犬もいます。甘味に敏感だからこそ、人工の甘味と天然の甘味の違いが気になるのかもしれません。
また、犬の食欲や嗜好には味覚だけでなく嗅覚、食感、温度、過去の経験なども大きく影響するため、すべての犬が甘いものを好むとは限りません。愛犬の食事を選ぶときは、味だけでなく匂いや舌ざわり、歯ごたえ、栄養バランスなども考慮することが大切です。
なお、犬の味蕾の数は人間の約3分の1から5分の1と少なく、人間ほど細かな味の違いは識別できないと考えられます。
人間にとっては安全でも、犬が食べると健康を害する可能性がある食べ物は少なくありません。特に甘いものは誤食しやすいため、日頃から十分注意しておきましょう。以下に挙げるのは、犬への有害性が高いとされる代表的な食べ物です。
・チョコレート
チョコレートに含まれるテオブロミンは犬にとって中毒性のある成分で、嘔吐や下痢、興奮、けいれんなどの症状を引き起こすことがあります。特にカカオ含有量の多いダークチョコレートはリスクが高いため、食べてしまった場合はすぐに動物病院を受診しましょう。
・キシリトール
犬がキシリトールを摂取すると、急激な低血糖、けいれん、意識障害、肝不全といった重篤な症状を起こす危険性があります。ガムやグミなどに多く含まれており、注意が必要です。
・ネギ類(タマネギ、長ネギ、ニラ、ニンニクなど)
ネギ類には犬の赤血球を破壊する成分が含まれており、貧血などを引き起こす場合があります。加熱しても毒性は失われないため、ネギ類を使った料理の残りなども与えないでください。
・ブドウ・レーズン
原因物質は特定されていませんが、ブドウやレーズンを少量でも食べると腎不全などを発症する危険性があります。絶対に与えないようにしましょう。
<そのほか犬に与えるべきではないもの>
・カフェインを含む食品
・アルコールを含む食品
・生の豚肉
・生のパン生地
・加熱した動物の骨(特に鶏)
・マカダミアナッツ
これらの食べ物は愛犬の健康を一時的に害するだけでなく、命に関わる病気につながる可能性もあります。誤って口にしないよう手の届かない場所に保管するなど、日頃から注意を払っておきましょう。
なお、犬が必要とする栄養は人間とは大きく異なり、人間用の食べ物を与え続けると肥満や腎臓病、循環器系や消化器系の不調などのリスクが高まります。愛犬の健康を維持するため、日々の食事は栄養バランスを考慮して選びましょう。
■以下の記事でも、家庭内で起こりうる事故について詳しく紹介しています。
・救急医からの現場報告/家庭内に潜む様々な危険
■犬の肥満を防ぐための食事については、以下の記事でも紹介しています。
・ミニチュアシュナウザーの平均寿命は?肥満を防ぐための食事とは
どれだけ注意していても、愛犬の誤食を100%防ぎきるのは困難です。犬が危険なものを食べてしまったことに気づいたら、まず何を、いつ、どれくらい食べたのかを把握しておきましょう。愛犬の様子をよく観察し、嘔吐や下痢、けいれん、呼吸困難などの異変があればすぐに動物病院へ連絡してください。そのときには何ともなくても後から重篤な症状が出る場合もあり、油断は禁物です。
なお、自己判断で吐かせようとしたり何かを飲ませたりするのは危険です。必ず獣医師の指示に従ってください。また、誤飲物のパッケージなどが残っていれば受診時に持参しましょう。動物病院では、食べた直後であれば吐かせる処置を行うことが多いですが、状況に応じて解毒剤の投与や胃洗浄など適切な方法を選択します。
愛犬の誤食を防ぐには、日頃から危険なものを犬の手の届く場所に置かない、散歩中に拾い食いをさせないように注意するなどの対策をとることが大切です。さらに万が一に備え、かかりつけの動物病院や夜間対応の救急動物病院の連絡先を控えておくと安心でしょう。
個体差はあるものの、多くの犬は甘いものを好みます。ただし、甘味がある食べ物の中にはチョコレートやキシリトール入りのガムなど、犬の健康を害する可能性がある成分を含むものもあり、誤って口にしないよう注意が必要です。愛犬の体調を良好に保つためにも、人間の食べ物を安易に与えるのは避け、犬に適した栄養バランスのよい食事を与えましょう。
誤食を防ぐための対策と同様に、愛犬が安全に過ごせる床を選ぶことも重要です。「Live Natural for Dog」は、滑りにくい特殊加工で小型犬の転倒や関節への負担に配慮しています。お手入れが簡単で清潔な環境を保ちやすく、誤食防止にもつながります。愛犬の安全と健康を足元からサポートできる床材をお探しの方は、ぜひ導入をご検討ください。
石川 美代子
犬の管理栄養士、動物ケアスタッフ、動物医療技術師、犬の美容師(トリマー)。卒業後は動物看護師として動物病院に勤務し看護業務に従事。現在はwebライターとして主にペット関連記事の執筆、ペット用品・記事の監修などを行う。