COLUMN #59
動物医療技術師 石川 美代子
肉球は熱や冷気から身体を守ったり、歩行時や着地時に衝撃を和らげたりと、犬にとって様々な役割を持つ器官ですが、一方では地面と直接触れているので刺激を受けやすく、炎症などのトラブルが起こりやすい場所でもあります。
この記事では、意外と知らない肉球トラブルや、日々のケア方法を解説します。家庭内に潜む主な危険と対処法についても触れているので、愛犬と暮らしている方はぜひ参考にしてください。
散歩から帰ったら愛犬の肉球が赤くなっていたり、出血していたといった経験はないでしょうか。肉球は地面と直に接する場所なので、ケガや火傷、乾燥には十分注意が必要です。
健康な肉球は硬すぎず柔らかすぎず、適度に弾力があるのが普通の状態。表面はややザラザラしていますが、触った時に痛みを感じるほどではありません。そのため、肉球があまりにもがさついている、ヒビが入っている、赤くなっている、犬が気にして舐め続けているような場合は、肉球にトラブルが起きている可能性があります。
肉球の状態が良くないと歩行が不安定になり、足腰に余計な負担がかかったり、転倒したりするリスクが高まります。また、日常的にストレスがかかることで免疫力が下がり、様々な病気にかかりやすくなる可能性もあるでしょう。
肉球は再生能力が低く、一度トラブルが起こると中々治りません。肉球の異変に少しでも早く気付くには、歩き方に変化はないか、特定の足を舐めていないかなど、普段から愛犬の様子をよく観察することが大切です。散歩の後に足を拭く時はケガをしていないか、肉球の間に石や木の実などが挟まっていないかもよく確認してあげてくださいね。
■犬の肉球の構造と役割については、以下の記事で詳しく解説しています。
・犬の肉球の役割とは?肉球のお手入れでフローリングの滑りをケア
肉球を良好な状態に保つには、どのようなケアが必要なのでしょうか。肉球の基本的なお手入れとしては、「清潔を保つ」「クリームなどで保湿する」「マッサージをする」という3つの方法があります。
まず気をつけるべきは、異物や汚れによるトラブルです。散歩の後はペット用ウェットシートや固く絞った濡れタオルで拭き、足や肉球を清潔に保ちましょう。汚れがひどい場合はシャワーで洗っても構いませんが、湿ったまま放置するとかえって皮膚炎などのトラブルが起きやすくなるため、肉球の間までしっかり乾かすことが大切です。
また、肉球は乾燥するとひび割れしやすくなるため、日常的な保湿も欠かせません。私たちが手のお手入れに使うハンドクリームと同じく、犬の肉球にもお手入れ用のクリームやジェルがあります。つけすぎはベタつきや犬にとって不快感の原因となるので少量を薄くのばして使いましょう。足先を触られるのが苦手な犬の場合、一度にすべての足を保湿するのではなく、1日1本などのように分けてもOKです。愛犬に負担がかからないよう、無理のない範囲で行うと良いでしょう。
なお、保湿クリームを塗る時はマッサージも併用して行います。親指で肉球全体を優しくなでたり、手のひら全体で肉球を包み込んだりして、肉球周りの血行促進を図りましょう。また、手根球の下にあるくぼんだ部分には気持ちが落ち着くツボがあるので、嫌がらないようであれば優しく押してあげるといいですね。
肉球のケア以外にも愛犬のためにできることはたくさんあります。近年は室内飼いの犬が増えていますが、家の中には人が思っている以上に多くの危険が潜んでいます。
例えば、子犬や若い犬の場合、シニア犬に比べて誤食や骨折、感電などのリスクが高い傾向があります。特に生後1年未満の犬は好奇心旺盛で、何でも口に入れようとしたり、高いところでも平気で飛び降りたりと、ケガにつながりやすい行動が目立ちます。
これに対してシニア犬は加齢で身体機能や体力が落ちているため、何もないところでも転倒しやすくなったり、家具や壁にぶつかったりしやすくなります。関節や骨が弱っているシニア犬は、ちょっとした転倒が大きなケガにつながることも少なくありません。
事故やケガを未然に防ぐには、犬にとって安全な環境づくりを心がけることが大切です。不要な段差をなくす、人間の食べ物は犬が届かない場所に仕舞う、ケーブルは露出しないようにカバーで覆うなど、愛犬を守るために細心の注意をはらいましょう。
犬にとって安全な床は肉球のグリップ力がしっかり効く「滑りにくい床」です。特に小型犬は膝蓋骨脱臼(パテラ)など、関節疾患のリスクが高いため、日頃から十分注意したいもの。愛犬の幸せと健康のためにも、床材は滑りにくさに配慮したものを選びましょう。
肉球は犬にとって重要な部位である一方、とてもデリケートな部分でもあります。乾燥やひび割れなどのトラブルを防ぐには、日頃のケアが重要です。散歩の後は汚れや異物をしっかり取り除き、肉球クリームで優しくマッサージしてあげましょう。
また、犬の滑りにくさに配慮した床材を使用すれば、年齢や肉球の状態を問わず犬にとって快適な環境を整えることができます。当社の「LiveNatural for Dog」は滑りにくさと天然木の美しさを両立した温もり溢れるフローリングです。カーペットやラグマットのように爪がひっかかってしまうこともなく、シニア犬はもちろん、子犬や成犬と暮らす方にも安心してご利用いただけます。愛犬に優しい床材で本物志向の暮らしを実現したいオーナー様は、ぜひ導入をご検討ください。
石川 美代子
犬の管理栄養士、動物ケアスタッフ、動物医療技術師、犬の美容師(トリマー)。卒業後は動物看護師として動物病院に勤務し看護業務に従事。現在はwebライターとして主にペット関連記事の執筆、ペット用品・記事の監修などを行う。