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COLUMN #38

保護犬を引き取る条件とは?ハードルが高い里親募集に納得の理由

動物医療技術師 石川 美代子

走る子犬

近年よく耳にする「保護犬」という言葉。保護犬とは、さまざまな事情で保護された飼い主のいない犬のことを指します。この記事では、保護犬を家族として迎えたいと思った時、知っておきたい里親の主な条件やルールをご紹介。保護犬の譲渡条件が厳しい理由についても詳しく解説します。

保護犬を引き取る際の条件。譲渡会や保健所のルールとは

避難所の子犬

保護犬の里親になりたくて保健所や譲渡会の利用を考える人は多いでしょう。気に入った犬をすぐに迎えることができるペットショップと違い、保健所や保護団体から引き取る際は犬を家族として迎えるための条件をクリアしなければなりません。

例えば、年齢制限や家族全員による同意の有無、居住環境、収入、避妊・去勢手術を必ず実施できるかなど、多くの条件をすべて満たせなければ、保護犬を迎えることはできません。
また、条件を満たしていたとしてもすぐに引き取れるわけではなく、いくつかの手続きを踏んだ後に初めて家族の一員として迎えられるのです。気になる犬がいたら里親として犬を迎えるまでの流れを問い合わせておくと良いでしょう。

なお、各市区町村が運営する保健所と民間の保護団体とでは、里親になるための条件が異なっているのが一般的です。保健所から犬を引き取る場合は「狂犬病予防接種を受けさせること」や「終生飼育を行うこと」など、保護犬を増やさないようにするための基本的な条件のみを提示されることが多いでしょう。細かい生活背景などが確認されることはなく、トライアルによる相性確認などもないケースがほとんどです。

一方、民間の動物保護団体では団体ごとに詳細な条件が決まっており、犬によって条件が異なることも珍しくありません。年収や住宅に関する証明書類の提出を求められることもあり、保健所よりも厳しい条件を設けている団体が多いといえるでしょう。

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https://sippo.asahi.com/article/11981616

里親募集に制限はある?一人暮らしだと里親になれない場合も

眠る子犬

保護犬を迎えようと思って里親募集や保護団体のサイトを見ていると、「単身者不可」などと記載されていることがよくあります。一人暮らしの人にとっては理不尽に感じるかもしれませんが、一つ屋根の下で人と犬の両方が幸せに暮らすことや、万が一の事態を考えて設けられている条件なので、一概に厳しいといい切ることはできません。

まず、一人暮らしの場合は日中家を留守にする時間が長く、犬の世話が十分にできない可能性があります。最近は在宅ワークやテレワークのスタイルで働いている人も増えていますが、出社しなければいけない仕事をしている方は7~9時間ほど家を空けることになるため、犬と関わることができるのはごく限られた時間となってしまいます。その結果、犬は狭いケージの中で一日のほとんどを過ごさなくてはならず、結果としてトイレが長時間汚れたままになってしまう、急な病気や怪我に対処することができない、ストレス性の体調不良や問題行動が見られるなど、さまざまな問題が発生しやすい環境が作られてしまうでしょう。

十分な飼育費用の捻出など、経済的な問題もあります。現時点で経済的に余裕があったとしても、何らかの理由で働けなくなってしまったらどうでしょうか。状況にもよりますが、生活が困窮するリスクは二人以上で暮らしている家庭より高いといえます。

さらには転職や引っ越し、結婚、出産など、ライフステージが変化しやすいことも、単身者が里親条件から外れてしまう理由の一つです。犬と暮らす生活はとても楽しいものですが、保護犬を引き取ったことでさまざまな問題が起きてしまっては本末転倒です。もちろん、単身者でも問題なく犬と暮らせるケースはたくさんあります。ただ、犬を迎える際は客観的な視点を持ち、さまざまな角度から「犬を飼う」ということについて考えておくことが大切です。

<参考URL>
https://sippo.asahi.com/article/11981616

譲渡先で幸せに。悲しい想いをさせないためのルールに納得

保護犬に対する関心が高まっている近年では、厳しい里親条件を設けている団体も少なくありません。「条件が多すぎる」「個人情報の提示に抵抗がある」などの声もありますが、里親条件というのはすべてが犬のために決められたもの。保護した犬が幸せになれるよう、慎重に検討して定められたルールなのです。

なお、これはあまり知られていませんが、里親希望者には「保護以外の目的がある人」も少なからず存在します。例えば同時期に複数の里親希望を出して転売したり、迎えた犬を逃がしたり、なかには虐待する目的で保護犬を引き取るといった、かなり悪質なケースもあります。こうした悪意から保護犬たちを守る目的もあって、各施設や団体では細かい里親条件を設定しているのです。

保健所や保護団体の里親条件には、保護犬たちに幸せになってもらいたい、決して不幸にはなってほしくないという、スタッフさんたちの強い想いが込められています。反対にほとんど条件がないような団体は、譲渡費用やドッグフードの定期購入代など、犬の幸せよりも優先したい何かがある可能性も考えられます。保護犬を迎える際は団体の公式サイトなどをよく確認し、気になる部分がないかしっかり見極めることが大切です。

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<参考URL>
https://wanko.peace-winds.org/journal/9579#toc-11

保健所や保護団体では、保護犬の引き取りに対する独自のルールを設けています。保護犬の里親を希望するならこれらの条件をクリアしなければならないため、気になる犬がいるという方は一度問い合わせてみると良いでしょう。ご自身の生活環境を振り返り、犬を生涯育てていけるかどうかも改めて考えてみてくださいね。

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石川 美代子

犬の管理栄養士、動物ケアスタッフ、動物医療技術師、犬の美容師(トリマー)。卒業後は動物看護師として動物病院に勤務し看護業務に従事。現在はwebライターとして主にペット関連記事の執筆、ペット用品・記事の監修などを行う。

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