COLUMN #30
動物医療技術師 石川 美代子
犬の関節疾患で発症率が高い病気に、「膝蓋骨脱臼(パテラ)」という疾患があります。特に小型犬は膝蓋骨脱臼の発症リスクが高く、まだ若いうちから症状がみられるケースも珍しくありません。この記事では、犬の膝蓋骨脱臼の主な原因や症状、かかりやすい犬種や予防につながる環境整備について解説します。小型犬と暮らしている方はもちろん、現在犬と生活している方の参考になれば幸いです。
パテラ(膝蓋骨脱臼)とは、膝蓋骨が正常な位置から内側または外側に外れてしまった状態のことをいいます。主な症状は膝の痛みや違和感で、発症するとキャンと悲鳴のような声をあげて痛がる、スキップやうずくまるように歩く、後ろ足を地面につけることができないなどの様子がみられます。初期や軽度(グレード1~2)では無症状の場合も多いですが、重度(グレード3~4)になると正常な歩行が困難になり、手術による治療が必要です。
なお、パテラはどんな犬にも起こりうる疾患ですが、特に小型犬は発症率が高い傾向があります。中でもポメラニアン、トイプードル、チワワ、ヨークシャー・テリア、フレンチ・ブルドッグはパテラになりやすいといわれているため、日頃から注意すること。すでに発症している場合は食事や生活環境を見直し、悪化しないようさまざまな対策を行いましょう。
ちなみに、本来パテラとは「膝蓋骨」を示す解剖用語のため、厳密にいうと病名ではありません。しかし、日本では「パテラ=膝蓋骨脱臼」という意味で使われることが多く、獣医療の世界でも病名として広く認識されています。
■パテラになりやすい小型犬についてはこちらをご覧ください。
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パテラの原因は、先天性と後天性の大きく2つに分けられます。先天性の膝蓋骨脱臼では、生まれつき膝関節を覆う筋肉や骨の形に異常があり、膝蓋骨を納める溝が十分発達できなかったことで発症します。ポメラニアンやトイプードルなどの小型犬種ではこのタイプのパテラが多く、膝蓋骨は足の内側に脱臼するケースが多いでしょう。
対して後天性のパテラは、交通事故や高所からの落下など物理的な外傷の影響で発症します。足や膝を強く打ったり、滑りやすい床の上を思いっきり走ったりすると膝関節に大きな負担がかかり、パテラを発症する可能性が高まるため、くれぐれも注意してください。
もし膝蓋骨が外れた場合、時間が経ってしまうと関節に炎症がおこったり、骨・関節が変形したりする可能性があるため、放っておいてはいけません。軽度のパテラであれば、抗炎症薬の投与や体重管理、運動制限などの保存療法で症状の改善が期待できます。愛犬にパテラの疑いがあるときは、早めにかかりつけの動物病院を受診しましょう。
膝蓋骨脱臼のリスクを考えたとき、環境整備でもっとも悩むのは「床の滑り止め対策」ではないでしょうか。滑りやすい床は歩行時にバランスを崩しやすく、転倒や怪我の危険があります。特にフローリングは常に踏ん張って歩く必要があり、犬の足腰に大きな負担をかけるでしょう。
■愛犬とフローリングの関係についてはこちらもご覧ください。
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環境による膝蓋骨脱臼を予防するには、犬の生活スペースの床を滑りにくくする工夫が必要です。たとえば滑りにくいよう加工された床材に張り替える、マットやカーペットなどを敷くなど、犬の足にかかる負担を軽減させるコツはいくつもあります。また、爪や肉球の間の毛が伸びていると滑りやすくなるため、日頃からきちんとケアしてあげることも大切です。
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私たち人間と同じく、元気な足腰を維持することは愛犬の健康寿命を延ばすことにつながります。健康維持の基本は、自分の足でしっかり歩くこと。高齢時の寝たきりを防ぐためにも、愛犬が主に過ごす場所にはぜひ滑り対策を行ってくださいね。
膝蓋骨脱臼(パテラ)は、特に小型犬に多くみられる関節の病気です。小型犬の膝蓋骨脱臼は遺伝的要因が大きく、一度発症すると一生の付き合いになることも少なくありません。ただし、症状が軽いうちに発見し、適切な治療や環境を整えてあげれば、進行せず毎日を過ごすことができる場合もあります。肥満や日頃の生活習慣、環境面には十分に気をつけて、愛犬が快適に過ごせるようサポートしてあげましょう。
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石川 美代子
犬の管理栄養士、動物ケアスタッフ、動物医療技術師、犬の美容師(トリマー)。卒業後は動物看護師として動物病院に勤務し看護業務に従事。現在はwebライターとして主にペット関連記事の執筆、ペット用品・記事の監修などを行う。