COLUMN #27
動物医療技術師 石川 美代子
飼育放棄された犬や野良犬、繁殖引退犬など、施設や保護犬カフェで暮らしている犬は少なくありませんが、「実際に目にする機会がない」「どのように利用すればいいか分からない」という方も多いでしょう。
そのような声に応える形で、保護犬たちの様子や譲渡会の模様を取り上げるメディアが増えつつあります。この記事では、保護犬を取り巻くメディアの現状や保護犬を迎える際に知っておきたい「トライアル期間」について紹介します。
保護犬とは、自治体や民間の保護施設、個人宅などで一時的に保護されている犬のことです。保護された経緯は犬によってさまざまですが、どの犬にも共通しているのは「正式な飼い主がいない」ということ。ペットの飼育放棄は深刻な社会問題のひとつであり、近年はコロナ禍によるペットブームの影響で犬の飼育放棄増加も懸念されています。
そんななか、保護犬について取り上げるテレビや新聞、雑誌といったマスメディアも少しずつ増えています。マスメディアが保護活動や譲渡会について積極的に取り上げることで、保護犬たちが安心して生活できる「ずっとのおうち」は見つかりやすくなります。
また、マスメディアによっては多頭飼育崩壊や悪質なパピーミルの問題などについて言及しているものも。マスメディアの強力な影響力により、これまで動物シェルターや保護施設が主導してきた譲渡活動に新たな風が吹き込まれています。
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さまざまな場所や職業が舞台となるドラマの現場ですが、保護犬に対する関心が高まる昨今、保護犬カフェが舞台のドラマも放送されるようになっています。
保護犬カフェとはその名の通り、保護された犬たちがいるカフェです。多くの保護犬カフェでは、保護犬が自由に過ごしている店内で飲食を楽しみながら気軽に保護犬と触れ合うことができます。なかには愛犬同伴で利用可能な保護犬カフェやペットグッズを購入できる保護犬カフェもあり、保護犬を迎えることができない人も間接的に保護活動を支援できるのが大きな魅力といえるでしょう。
そんな保護犬カフェを舞台に展開するドラマが放送されたことで、これまで保護犬や譲渡という言葉に触れる機会がなかった人への認知も徐々に拡大。楽しみながら勉強になる、新たなコンテンツとしても役立っているのでしょう。ドラマのロケ地巡りが目的の人をはじめ、「保護犬と触れ合いたい」「保護犬を迎えたい」という人も来店するなど、さまざまな角度から保護活動における良い効果が期待されています。
<参考URL>
https://wankonowa.com/column/before-living/516/
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保護犬を家族として迎える場合、保護団体やカフェに里親希望の申し込みを行います。トライアルがある団体では実際に自宅へ保護犬を連れ帰り、1週間から10日ほど一緒に生活することになるでしょう。
トライアル期間は先住動物や家族との相性を確認するための期間であり、お互いの幸せのために必要な譲渡審査の一環です。実施の有無や期間は保護団体によって異なるため、お迎えを検討している保護犬がいる場合は事前に保護団体へ確認しておくとよいでしょう。
なお、トライアル実施をはじめ、各団体が定める一定の条件を満たしていない場合は、残念ながら里親になることはできません。犬を飼育する経済力、家族全員の同意、終生飼育の約束など、犬と暮らすうえで満たしておくべき条件は複数あります。保護犬に限らず、犬を迎える際は改めて自身の生活状況を確認し、生涯犬を幸せにできるか考えることが大切です。
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<参考URL>
https://hug-u.pet/feature/205
この記事では、保護活動を取り巻く現状やマスメディアでの扱い、保護犬の里親になる資格やトライアル期間について解説しました。近年、さまざまな保護団体による保護犬の啓発活動が増えるにつれ、メディアでも頻繁に取り上げられるようになった保護犬の存在。ドラマの舞台として保護犬カフェが登場するなど、動物愛護への関心も深まっています。
一方で、保護犬の迎え入れは誰でもできるわけではありません。譲渡の条件は保護団体ごとに異なりますが、保護犬の里親になるには経済力や家庭環境など、さまざまな条件をクリアする必要があります。なかでもトライアル期間は犬との相性を見極めるための重要なステップであり、保護犬が幸せになるために欠かせない期間といえるでしょう。
保護犬の存在を知り、関心を持つことが幸せな犬を増やすための第一歩。全国各地では今もたくさんの保護犬たちが、この先の犬生を心穏やかに過ごせる最高の家を探しています。この記事が保護活動を行う方や情報提供を必要とする方の一助になれば幸いです。
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石川 美代子
犬の管理栄養士、動物ケアスタッフ、動物医療技術師、犬の美容師(トリマー)。卒業後は動物看護師として動物病院に勤務し看護業務に従事。現在はwebライターとして主にペット関連記事の執筆、ペット用品・記事の監修などを行う。