COLUMN #20
動物医療技術師 石川 美代子
近年ニーズが高まっている老犬ホームは、様々な事情から愛犬の世話ができない時に役立つサービスのひとつ。飼い主さんはもちろん、多くの手助けが必要な高齢犬が快適な毎日を過ごすために必要な場所でもあります。この記事では、老犬ホームの概要や主なサービス内容と、飼い主さんが抱える老犬介護の実情、保護犬・老犬の課題について解説します。
老犬ホームとは、その名の通り老犬を預かって介護する施設のことです。利用期間や料金は施設によって異なりますが、基本的には日帰りや一泊などの短期利用から、数か月や数年などの長期利用まで自由に選択できます。場合によっては畜犬登録(飼い犬としての届け出)の名義を施設にゆずり、終身で預かってもらえる「終生飼養・譲り受け」なども可能です。
老犬ホームで受けられる代表的なサービスには、日々の食事介助や排泄介助、遊びやお散歩、お手入れなどがあります。獣医師や動物介護士などの有資格者が在籍している施設も多く、心や体の事情で老犬を世話するのが難しい人のサポートをしてくれます。夜間も複数のスタッフが交代で見てくれる施設も少なくないため、飼い主さんでは手が回らなかったケアをしっかり受けられるのが大きなメリットといえるでしょう。
なお、老犬ホームを運営するには「動物取扱業の登録」が必要です。保管業で登録している場合は預かりのみ、譲受飼養・終生飼養も登録している施設では預かり以外に、終生飼養・譲り受けもできます。老犬ホームを探す時は各施設のホームページを確認し、動物取扱業の登録がきちんとされているかチェックしておきましょう。
<参考URL>
https://orangelifeshonan.com/about/
ペットフード協会の「2022年 全国犬猫飼育実態調査」によると、犬の平均寿命は14.76歳と一昔前より明らかに延びています。獣医療の進歩や食事・生活環境の改善によって犬の平均寿命は年々延び、それに伴って高齢化も進行。人間の介護現場でも問題視されている「老老介護」状態になる家庭が増えれば、老犬ホームのニーズはますます高まることでしょう。
また、高齢犬はこれまで自力でできていたことが難しくなり、サポートを必要とする場面も多くなります。トイレや食事の介助、お散歩のサポート、床ずれや認知症への対応など、必要なケアは少なくありません。これらをすべて飼い主さんが行うのは想像以上に大変で、肉体的・精神的に追い込まれてしまう方も多いのが現状です。
老犬の介護に当たって悩みがある時は、老犬ホームや動物病院などのプロに相談すると解決策が見つかりやすくなります。老犬介護で大切なのは、何よりも飼い主さん自身が疲れ切ってしまわないこと。きちんと世話しようとするのは素晴らしいことですが、時には老犬ホームのような専門施設を頼ることも検討してみてはいかがでしょうか。
<参考URL>
https://petfood.or.jp/data/chart2022/6.pdf
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私たち人間と同じように、犬も年齢を重ねると運動能力が低下し、運動不足になりがちです。体のどこかが不自由だったり、体力が落ちていたりすると、散歩や遊びを嫌がることも多いでしょう。しかし、適度な運動は犬の健康維持に欠かせないもの。1回5分でも10分でも良いので、意識して外に連れ出してあげることが大切です。
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犬の運動不足は、保護犬シェルターでも大きな課題となっています。保護犬シェルターというのは、様々な理由で飼い主と暮らすことが難しくなった犬や迷子の犬、野犬などを保護する施設のこと。保護犬シェルターは慢性的な人手不足の状態にあり、掃除や洗濯、食事の世話などやるべきことも多いため、犬ごとの十分な散歩時間が取れていないケースも少なくありません。
経済的な困窮や安易なお迎えなどによって手放される犬が増えている今、保護犬の運動不足は早急に対処しなければならない大きな課題です。施設によっては保護犬の散歩ボランティアや一時預かりのボランティアなどを募集していることもあるので、興味がある方はぜひ近隣の保護犬シェルターを検索してみてくださいね。
<参考URL>
https://www.aeonpet.com/topics/pet-column_008.html
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愛する家族には少しでも長く生きてほしい。愛犬家なら誰でも思うことですが、犬の状態や家庭環境、飼い主さんの健康状態によっては、老犬の面倒を思うように見られなくなるケースも少なくありません。また、保護犬を含む高齢の犬はどうしても運動不足になりがちです。もし今「愛犬の介護に負担を感じている」「十分な世話ができていないと思う」場合は、ぜひ老犬ホームの利用を家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。
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石川 美代子
犬の管理栄養士、動物ケアスタッフ、動物医療技術師、犬の美容師(トリマー)。卒業後は動物看護師として動物病院に勤務し看護業務に従事。現在はwebライターとして主にペット関連記事の執筆、ペット用品・記事の監修などを行う。