都会に住んでいたころは、常に音を気にし、また散歩でも多頭飼いというだけでも周囲の目を気にし、暑い時期であれば出かける時間も気がかりでした。人も犬もいろいろな問題を抱えながら生活していましたが、年齢的にも余力があるうちに愛犬と時間を共有しなからストレスのない暮らしを実現したい、また、そういう暮らしを多くの飼い主さんにも体験していただきたいという思いから、北軽井沢への移住とペットと泊まれる宿の経営を決断しました。ここは、真夏でも30℃を超えることが1週間もないぐらいで、アスファルトも少ないし木陰もたくさんあります。また、人も車も少ないので安心して散歩することができます。隣の家とも離れていますので、音についてもあまり気にしなくてすみますし、何より豊かな自然環境の中で、人も犬ものびのびと暮らすことが実現できました。

自分たちよりも、都会育ちのこの子たちが一番変わりました。初めは「何で砂利や土の上を歩かないといけないの？」いう感じで歩くのを嫌がっていましたが、今ではどこでも歩きますし、雨が降っても雪が降っても喜んで歩くようになっています。食生活も大きく変わりました。こちらではほとんど外食がありません。畑で作った野菜をこの子たちと一緒に食べたり、知り合いからジビエを分けてもらいジャーキーを作ってあげたりしています。林に囲まれ、常に木に触れながら暮らしていることで、犬も人も本来の行動をするようになったと感じています。

私は床も壁も天然木が理想と思っています。腰ぐらいまで同じテイストで立ち上げるとデザインも素敵になります。ただし、安全面の配慮は欠かせません。現在5匹のヨークシャーテリアとともに暮らしていますが、この犬種は特に骨折や膝蓋骨脱臼に弱く、1匹は骨折を経験しましたし、1匹は先天的に膝が弱く脱臼を起こすようになりました。ですからクッション性のある床、滑りにくい床は私たちにとって必須条件です。また、最近では玄関に手を洗ったり犬の足や体を洗うための洗面台を設置する飼い主さんも増えています。コロナの影響もあり、これからはウイルスへの対策もとても重要になると思います。ぜひ床だけでなく、安全を考慮した家づくり、製品開発をお願いいたします。

第一に人と犬が快適に安全に過ごしていただけるような施設づくりに重点を置きました。例えば、内装材であれば消臭効果の高い塗料を使っていますし、床であればカーペットは防水性のものを使ったり、犬が歩いても大丈夫なクッションフロアを使ったりしています。また安全面からは玄関や階段部分にはゲートを設置しました。そして、何より人も犬も自然の中で楽しんでいただきたいという思いから、庭をドッグラン仕様にして、テラスからそのまま遊びに出られるような工夫もしています。

いま、犬を人間化して「うちの子」と言ったりしていますが、犬はやっぱり犬。犬本来の行動を妨げないことが大事だと思います。例えば、吼えるなら音が漏れないようにすればいいし、臭いが気になるなら消臭できる建材や機器があります。犬を考えての行動が、結果的に人にも快適な家に変わるはずです。セルム北軽井沢はそういう観点で造りました。周りを気にすることなく、人も犬ものびのびと自然体で過ごしていただければと思います。