CUE09号
5/24

床と幸せの関係を考えるにあたり、まず、住まいと幸せの関係を明らかにするべく、デンマークの人々の暮らしに注目してみたいと思います。世界幸福度ランキングで毎年上位につくデンマークに「ヒュッゲ(hygge)」という言葉があります。日本語で「心地よさ」「ほっこり感」を意味するこの言葉は、デンマーク人の幸福度の根底にある、暮らしのなかで大切にしている概念として、数年前に世界的なブームになりました。一昨年、世界の床を調査する企画で、デンマークの都市コペンハーゲンの住宅を訪問しました。施主はデンマークを代表する家具工房でウェグナーの家具を手掛けてきた木工職人。古い家を購入し、キッチンや家具だけでなく床も家主が自作して蘇らせた家は、まさにヒュッゲな空間でした。壁には薪ストーブがあり、ダイニングテーブルや窓際にはキャンドルが灯っていました。床材はデンマークで一般的なパイン材で、ソープとホワイトオイルを使ってナチュラルに仕上げられており、室内を明るく優しい空間にしていました。デンマーク人は衣食住のなかで、特に〝住〞の満足度を求める傾向があり、新築を手に入れるより古い家を買って自分流にリノベーションすることを好む人が多いそうです。ウェグナーのロッキングチェアを中心にシンプルにまとめられたインテリア。壁には薪ストーブ。床暖房も入っており心地よい空間でした。床と幸せの関係cue04

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る