CUE09号
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土間と床と家具〝土間は家の原点です。そこに安心できる場所として「床」が発生するか「家具」が発生するかで、日本と西洋の住文化は分かれました。日本の床は西洋の家具と等価なんです。〞建築家の黒川雅之さんは著書『デザインの修辞法』の中でそう語ります。今号の特集「床と幸せの関係」で日本ではインテリアの中の「床」が、住まいの居心地を大きく左右するというお話をさせていただきました。日本と西洋では床に対する考え方が異なります。西洋と日本の住文化の発展の仕方を見ることで、日本における住まいの「床」の位置付けが見えてきます。 住まいの成り立ちを考えると、最初の家屋は土の上に屋根を架けただけのものでした。その土間に寝るための敷物としてベッドや椅子が作られ、「家具」として発展していったのが西洋の建築・住文化。土間に敷かれた敷物が家具にならず、履物を脱いで上がる「床」になっていったのが日本の建築・住文化です。来客との接点の場として土間を残しながら、床に畳を敷き、布団やお膳などの小道具を発展させて日本の床の文化系統をつくり上げました。つまり、西洋の家は全て床が土間の感覚で、家具を「ちょっと落ち着けるところ」としたのに対して、日本では床を貼ることで「ちょっと落ち着くところ」をつくりあげたのです。日本には家具の歴史がなく、西洋には床がありません。土間から家具へという発展と、土間から床へという発展の違いが、西洋と日本の建築を全く変えてしまいました。そしてそれは、生活する上での様々な作法にも影響を与えています。(黒川雅之著『デザインの修辞法』より) 次号CUE10号では、著者である黒川雅之さんにお話を伺い、西洋と日本の建築や住生活、床の違いについて詳しくご紹介いたします。(文・山野)21

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